医療・看護

介護施設の確認ポイント~医療行為や看護体制

有料老人ホームなどの介護施設で働く介護スタッフは、法律上、医療行為や医療措置に該当する行為を行うことができません。そのため、入居を希望される方が、医療行為を日常的に必要とする場合には、医師や看護師が常駐している介護施設に入居する必要があります

近年では、こういった医療行為が行えるよう、看護師が駐在している施設も増えてきています。
しかし、24時間看護師が常駐している施設や、病院などの医療機関が併設された施設、また、夜間の医療行為が必要のない方向けに、日中のみ看護師が常駐している施設など、常駐の時間は施設によっても異なりますので確認が必要です。

その他にも、医療行為が必要な方の場合は、入居をご希望の施設がどのような症状や医療行為に対応しているのか、また通常の介護サービスとは別に、医療費がどれくらいかかるのかなど、事前に詳しく確認することで、安心して施設を決めることができるでしょう。

ここでは、さまざまな病気と、それに対する医療行為や施設の対応についてを紹介しております。

介護施設で必要とされる医療行為と、その対応

インシュリン投与

糖尿病の人が、脾臓からインシュリンが分泌されなくなったり、分泌量が減ると、血液中の糖分(ブドウ糖)がうまく代謝できずに血糖値が上がってしまうため、これを防止するため、不足したインシュリンを専用の注射器で体内に取り入れる必要があります。

インシュリン注射は、医師、もしくは医師の指示を受けた看護師のみが行なうことができます。または、医師の指導のもと自分で行なうこともできますが、ご自身での対応が難しい場合には専門の看護スタッフによる介助が必要です。

ペースメーカー

ペースメーカーを利用している方でも、埋め込んでから数ヶ月以上が経過し、症状が安定していれば、日常生活にも問題なく、それほど高度な医療介護も必要ではないため、入居可能な施設は多くあります。

心臓ペースメーカーには、体外式/体内植え込み式があり、電池の容量は5~10年ほどです(ペースメーカーの形式などにより期間は異なります)。内蔵電池の残量や作動状況の確認のため、定期健診を受ける必要があります

透析(人工透析)

人工透析には機械(血液透析機)を使う方法と、患者自身の腹膜を利用する腹膜透析の2種類の方法があります。しかし、透析機による人工透析は専門の病院でしか行なうことができません。

施設に入居しながら透析を受ける場合は、週3回の通院介助が必要となりますが、入居できる施設は多くあります。また、腹膜透析の場合は患者自身で行なうことも可能ですが、感染症などのリスクを考慮して決めるようにしましょう。

褥瘡(とこずれ)

寝たきりの方や身体に麻痺がある方が、寝たままの姿勢から、自分で身体の向きや姿勢が変えられない状態が続くと、ベッドなどに触れている部分に体重による圧迫が長時間加わるため、その部分の血行が悪くなります。

これがひどくなると、皮膚組織に十分な酸素や栄養が行き渡らなくなり、その部分が壊死(えし)して褥瘡(じょくそう:とこずれ)になります。

一度褥瘡ができてしまうと大変治りにくいため、2、3時間おきに姿勢を変えるなどのケアのほか、褥瘡箇所の消毒やガーゼの交換などは看護師による医療処置も必要となるため、介護職員では対応ができません。

ストーマ(人工肛門)

ストーマ(人工肛門)の装着や交換、皮ふの清拭やケアなどは医療行為のため、介護スタッフでは行なうことができないため、看護師が配置された施設に入居する必要があります。

胃ろう

人工呼吸器などが設置されていて、口から直接食事をとることができない方や、食べものを飲み込む力が衰えて、ものを食べるとのどに詰まらせたり(摂食嚥下障害)むせ込んだりする方の胃に、直接栄養を送り込む方法のことを胃ろうといいます。

胃ろうに関する行為はすべて医療行為にあたるため、専門の看護師や医師がいる施設に入居する必要があります。

在宅酸素(在宅酸素療法:HOT)

在宅酸素療法は、自宅もしくは入居施設内に酸素供給機を設置し、必要に応じて、あるいは24時間酸素吸入を行うものです。

患者さんに装着されている状態での酸素ボンベの取り扱いは医療行為にあたるとみなされるため、施設で処置を行なう場合は、看護師や医師による医療介護が必要です。

尿バルーン(尿道カテーテル)

病気や手術後など安静が必要で、自力排尿ができない場合、ゴムやシリコンでできた管(カテーテル)を尿道から膀胱に直接挿入して尿を排出させることを、尿バルーン(尿道カテーテル)と呼びます。

尿バルーン中は、排尿状態(血尿などがないか/尿道口などに傷がないか)をチェックしたり、カテーテルの定期的な交換が必要となりますが、これらは医療行為にあたるため、介護スタッフでは対応することができませんので、看護師や医師がいる施設に入居する必要があります。

たん吸引

たん吸引とは、気管切開などで、たんやつば、鼻水などの分泌物を、鼻から細いチューブを挿入して吸い出すことです。これは医療行為にあたるため、これまでは医師や看護師のみが処置できるものとされていました。

しかし、ALSの患者さんの場合などは頻繁にたんの吸引が必要となるため、厚生労働省は、一定の条件が満たされる場合**には、介護職員によるたん吸引を認める通知を出し、介護スタッフの対応が可能となっています。

**定期的な診療や訪問介護を実施する。医師などがたんの吸引方法について指導する。本人の同意を得ることなど。全ての介護施設でこれらの条件が満たされる訳ではありません。

気管切開

気管切開とは、たんなどの分泌物がのどにつまり、窒息など危険な状態になることが予想される場合、あるいは呼吸不全などの症状がある場合に、手術をしてのどに穴を開け、直接気管にカニューレと呼ばれるチューブを挿入して気道を確保する治療方法です。

これらの気管切開に関する行為はすべて医療行為にあたります。
また、容態が急変することもあり、通常以上の医療介護が必要となりますので、受け入れ可能な施設は多くの場合限定されます。

中心静脈栄養(IVH)

長期に渡り、口からの栄養摂取が難しい状況にあり、胃ろうによる栄養摂取も難しい患者さんが、中心静脈(上大静脈/下大静脈)から直接濃度の高い輸液(高カロリー輸液:TPN)を注入して、栄養を補給する方法を中心静脈栄養(IVH)と呼びます。

この処置を行なうためには、24時間態勢での医学的管理が必要となるため、入居施設が医療機関と併設されているなどの条件が必要です。そのため受け入れ可能な介護施設は限定されます。

鼻腔経管

口からの栄養摂取が難しい場合、鼻から消化管に直接チューブを挿入して、そこから流動食を投与する方法を鼻腔経管、あるいは経管栄養と呼びますが、これは医療行為にあたります。

また、長期間続けると副鼻腔炎を引き起こしたり、チューブを入れ替えるときに誤嚥(ごえん)などのリスクがあるため、受け入れ可能な施設は限定されます。

介護施設に確認が必要な病気

筋委縮性側索硬化症(ALS)

筋委縮性側索硬化症(ALS)は、手足やのど、舌の筋肉が、徐々に痩せて力がなくなっていく病気です。

症状が進むと、運動能力だけでなく、呼吸する力や食べものを飲み込む力も弱くなり、場合によっては人工呼吸器の設置や、定期的な痰(たん)の吸引、胃ろうの造設など、医療的な措置が必要となります。
そのため、受け入れ可能な介護施設はかなり限定されます。

また、ALSにともなって起こる筋肉や関節の痛みに対しては毎日のリハビリテーションがとても大切で、リハビリを行なうには、専門の看護師とともに、リハビリ施設も必要となります

HIV

ヒト免疫不全ウイルス感染症呼ばれ、人に感染すると免疫力が低下し、健康な人であれば問題にならない菌やウイルスなどによって、さまざまな感染症にかかりやすくなる病気です。

感染していても入居できる施設はありますが、入居事例も少なく、入居基準などが一般化されていないため、入居に際しては施設ごとの確認が必要です。

結核

結核は、かつては不治の病と言われていましたが、現在では、抗結核薬などを使った治療法が確立されているので、症状が完治し、感染の危険がなければ施設への入居に問題はありません。

MRSA(ブドウ球菌感染症)

MRSAは、人の鼻やのど、皮膚などに常在している細菌で、健康な人が感染しても発症することは稀ですが、高齢者や子ども、病気などで抵抗力が低下している人が感染すると、重篤な症状を発症します。
そのため、MRSAに感染している方は、介護施設への入居を断られる場合が多いです。

MRSAに感染している方は、まずは医療機関で治療をしたうえで、入居可能な施設を探す必要があります。

梅毒

梅毒はかつて不治の病として恐れられていましたが、現在では早期治療すれば完治します。

治療により完治し感染の危険がなければ、入居可能としている施設が多いようですが、明確な入居基準は定められていないため、対応については個々の施設に確認する必要があります。

肝炎

肝炎ウイルスに感染することで、肝臓が炎症を起こす病気ですが、直接患者の血液や排泄物などに触れることがなければ感染の危険性は少ないため、肝炎でも入居が可能な施設は多くあります。

対応については個々の施設に確認してください。

疥癬(かいせん)

疥癬とは、ダニの一種であるヒゼンダニが、人の角質層に寄生して激しい痒みを起こす皮膚疾患です。

極めて強い感染力を持ち、過去介護施設での集団感染の事例もあるため、入居不可としてる施設が多い状況です。

疥癬は完治させることが可能な病気なので、施設に入居したい場合は、事前に病院を受診して、完治させておく必要があります。

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