2016年02月03日

「無届けホーム」急増の背景とは?厚生労働省が「有料老人ホーム」についての指針を改正

ベッドと手

通常、高齢者に介護や食事といったサービスを提供する入居施設を設置する際には、都道府県など行政への届け出が必要となりますが、ここ数年、こうした届け出をしないまま運営される施設(通称「無届け介護ハウス」「無届けホーム」など)の急増が問題となっています。

厚生労働省の調査によると、2014年10月末の時点で無届けの有料老人ホームが全国に961施設あるとのことですが、これは各自治体が把握している施設の数であり、実際にはもっと多くの無届けホームが存在するとみられています。

「無届けホーム」の問題とは

このように無届けホームが急増する背景には、増加する高齢者に対して施設が不足していることや、低所得のため、有料老人ホームに入居できない高齢者が増えているという現状があります。こうした状況を反映するように、自己負担を比較的低く抑えられる特別養護老人ホームに関しては、施設に入りたくても入れない「待機老人」が全国で約52万人も存在するといわれています。

また、ひと口に「無届けホーム」といっても、その形態や提供されるサービスはさまざまであり、なかには一般的な有料老人ホームの枠におさまらない手厚いサービスをおこなう無届けの施設もあるとのことです。しかし、無届けで運営される施設の場合、厚生労働省が定める安全基準を満たしていないことも多く、行政の監督・指導も入らないため、入居者の健康や人権がおびやかされてしまうケースもあるのです。

2009年に群馬県渋川市の無届けホームで起きた事故では、火災により入居者10名が死亡する事態となりましたが、裁判では施設の防火設備などに不備があったことも指摘されています。また、2014年には東京都北区の高齢者向け「シニアマンション」において、入所者がベッドの四方を柵で囲まれるなどの身体的拘束を受けていたことが発覚したほか、昨年3月には愛知県名古屋市の無届けホームで、入居者へ暴行したとして介護ヘルパー3人が逮捕される事件も起こっています。

安心できる有料老人ホームを選ぶには

こうした事態を受け、有料老人ホームの設備などについて基準を定めた指針の改正が、昨年3月末に厚生労働省から各自治体に通知されました。

この改正では、届け出がおこなわれない大きな理由となっている「設備等の基準」が一部緩和されたほか、「サービス付き高齢者向け住宅」についても、食事の提供など「老人福祉法が定める有料老人ホームにあたるサービス」をおこなっている場合は、標準指導指針の対象に位置づける(=届け出が必要となる)という見直しもおこなわれました。

無届けホームが急増した背景には、「待機老人」の問題にもあらわれているように、ほかに行き場がなく、無届けの施設に「入らざるを得ない」状況に置かれている高齢者が大勢いるという現実がありますが、利用者の健康や安全を守るためにも、有料老人ホームを選ぶ際には、安全面や信頼性、入居者の待遇などについて、しっかりと検討してから入所を決めることが重要といえるでしょう。

▼参考資料

・無届けホーム、全国に961施設 行政の対応追いつかず 朝日新聞デジタル
http://digital.asahi.com/articles/ASH414WJCH41OIPE01H.html?rm=489

・たまゆら元理事長に有罪 老人施設火災10人死亡 前橋地裁判決 日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1802E_Y3A110C1CC0000/

・入居高齢者を身体拘束か ベッド四方を柵で囲む 北区の「シニアマンション」 産経ニュース
http://www.sankei.com/affairs/news/141112/afr1411120024-n1.html

・厚生労働省、有料老人ホーム設置運営標準指導指針を改正 全国有料老人ホーム協会
http://www.yurokyo.or.jp/information/20150331_01.html

 

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