2017年06月16日

介護と育児の【ダブルケア】問題、仕事への影響や経験者が「やっておけばよかった」と思うことは?

人生グラフ

親の介護はそれだけでも大変な労力を伴うものですが、こうした親の介護と育児が同時に発生する状況をダブルケアといいます。

内閣府が2016年4月に公表した「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査」によると、国内では約25万人がダブルケアをおこなっていると推計されるとのことですが、これは入浴や食事、トイレといった日常生活の介護をおこなっている人に限定した数字であり、見守りや手続きの代行といった広い意味でのケアをしている人を含めると、ダブルケアに直面している人はもっと多く存在する可能性もあります。

このようにダブルケアをおこなう人が増えている背景には、晩婚化の影響により女性が最初の子どもを出産する年齢が上がっており、子育てをする時期が親の介護をする時期と重なりやすくなっていることなどがあるといわれています。

ダブルケアをおこなう人の年齢は?

上記の調査によるとダブルケアをおこなう人の年齢は男女ともに約8割が30歳~40歳代とのこと。

また、ダブルケアをおこなう人の平均年齢は男女ともに40歳前後(男性41.2歳、女性38.9歳)となっていますが、これは「育児のみ」をおこなう人の平均年齢と比較して4~5歳高く、「介護のみ」をおこなう人の平均年齢と比較して20歳程度低い年齢だそうです。

女性に負担が集中しがちな状況も

一方、男女の別で見ると、ダブルケアをおこなっている人は男性約8万人、女性約17万人と圧倒的に女性のほうが多くなっています。

さらに調査では、ダブルケアをおこなう男性の半数以上(52.6%)が「ほぼ毎日」配偶者からの手助けを受けているのに対し、女性ではこうした配偶者の手助けを受けている人は4分の1(24.4%)程度にとどまっていることなども報告されており、女性のほうがダブルケアに際して周囲の手助けを得にくく、負担が集中しがちな現状も伺えます。

介護・育児と仕事の両立が問題に

パソコンの前で眠る女性

上記の調査結果にも明らかなように、ダブルケアの大きな問題点は一人の女性に育児と介護の負担が集中することといわれています。

同調査ではダブルケアをおこなう女性の約半数(48.6%)が仕事をしており、全体の約4分の1にあたる23.2%の女性が「仕事を主」としている有業者であることも判明していますが、こうしたデータからは、ダブルケアをおこなう女性の多くが介護・育児の負担に加えて、「仕事との両立」という問題にも直面していることがわかります。

また同調査におけるダブルケアの仕事への影響についての質問では、男性の約半数が「(ダブルケアに直面しても)業務量や労働時間を変えなくてすんだ」と答えているのに対し、女性ではこうした人が約3割にとどまっていることや、「(ダブルケアに直面したことで)業務量や労働時間を減らした」という人が男性では約2割なのに対して、女性ではこうした人が約4割に上っていることも判明しています。

さらに、「(ダブルケアに直面したことにより)離職して無職になった」という人の割合も、男性2.6%、女性17.5%と男女で大きな差がある結果となっていることもあり、ダブルケアの仕事への影響は女性のほうが大きいといえそうです。

子どもや親に対する「十分にケアができていない」という罪悪感

それでは実際にダブルケアをおこなっている人は、いったいどのような点を負担に感じているのでしょうか?ソニー生命保険が2017年にダブルケアの専門家とともにおこなった「ダブルケアに関する調査2017」では、こうしたダブルケアの負担についてもアンケートをおこなっていますが、女性のダブルケア経験者では「精神的なしんどさ」を負担としてあげた人がもっとも多く(73.1%)、「子どもの世話を十分にできない」と答えた人も半数以上(52.2%)にのぼっていました(複数回答可)。

また同アンケートでは、「親/義理の親の世話を十分にできない」ことを負担に感じたと答えた女性のダブルケア経験者も50.7%にのぼっていましたが、ダブルケアをおこなう人においては、介護と育児を同時におこなう忙しさなどから、子ども(あるいは親)に対して「十分なケアができていない」と罪悪感を持ってしまうケースも多く、そのことが精神的なストレスを招いてしまう場合もあるといわれています。

ダブルケアに直面した人が「やっておけばよかった」と思ったこと

話し合い

ちなみに上記のアンケートでは、ダブルケア経験者(138名)に対して、ダブルケアへの備えとして「やっておけばよかったこと」についても質問していますが、回答としてもっとも多くの人があげたのが、「親が元気なうちに介護について話し合う」ことでした(34.8%)。

介護が必要な状態になる前に、介護のプランや介護費の負担について親と話し合っておくことは、ダブルケアに限らず、介護をスムーズに進めるためには大切なことといえますが、特にダブルケアの場合は、介護がスタートしてからでは忙しさなどから十分な時間が取れない場合も多いため、こうした事前の話し合いや取り決めが重要となります。

また、上記のアンケートで二番目に多かったのは「子育て・介護に関する地域の支援制度を調べる」(31.9%)という回答でしたが、利用できる支援やサービスを徹底的に利用することは、介護や育児による負担やストレスを軽減するためにも必要なことといえるでしょう。

介護の相談窓口「地域包括支援センター」と子育ての相談窓口「子育て世代包括支援センター」

ダブルケアは、育児をおこなっている期間に突然、親が介護を必要とする状態になることからスタートすることも多いといわれています。たとえば、親が病気やケガで倒れたり、認知症が疑われるような状態になった場合は、専門医を受診するのとともに、介護の総合窓口として各地域に設置されている地域包括支援センターに早めに相談することが重要です。

地域包括支援センターにおける要支援や要介護の認定に向けた申請の手続きは、そのまま介護保険による介護サービスの利用に向けた手続きともいえます。まずはこうした認定を受け、その後はケアマネジャー(介護支援専門員)と相談しながら介護プランを決めていくことになりますが、ダブルケアをおこなう人においては、その際に自分の家庭の状況(育児や仕事など)について詳しく説明し、介護保険でどのようなサービスが利用できるかを確認しておくことも大切といえるでしょう。

一方、育児の相談に関しては、妊娠初期から出産、育児までをサポートする総合相談窓口である子育て世代包括支援センターの整備を政府が進めており、おおむね2020年3月末までに全国展開を目指す予定とのこと。

この子育て世代包括支援センターは、2016年4月の時点では全国296市区町村・720ヶ所に設置されていますが、京都市では上記の地域包括支援センターと子育て世代包括支援センターのあいだで情報共有を強化し、両センターの職員が介護・育児の両方の相談に応じて、必要なサービスを紹介できるようにするなど、ダブルケアへの支援を拡充することを表明しています。また大阪・堺市では、市内にある7つの区役所すべてに「ダブルケア相談窓口」を設置。介護の専門的知識を持つ職員が、研修を受けるなどして子育ての知識を習得し、介護と育児の相談にあたっているとのことです。

地域包括ケアシステム(ページ下部に全国の地域包括支援センターの一覧を記載) 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/

子育て世代包括支援センターの実施状況 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/2016center.pdf

当事者が悩みなどを語り合う「ダブルケアカフェ」

色鉛筆と吹き出し

上記のようにダブルケアの支援に自治体が動きはじめた一方で、近年では民間でもダブルケアへのサポートをおこなう団体が出てきています。神奈川・横浜市を拠点とする一般社団法人ダブルケアサポートでは、ダブルケアについての講座をおこなっているほか、ダブルケアに直面する当事者や経験者、支援者などが集まりダブルケアについて語り合うダブルケアカフェの開催を支援し、全国各地に普及させる活動も展開しているとのこと。

上記のソニー生命保険らの調査では、「ダブルケア経験者が、地域で直接相談にのってくれる」「地域でのおしゃべり会など、ダブルケア当事者が地域でつながる場をつくる」といった支援策を多くの人が求めていることも確認されていますが、介護・育児の悩みを「一人で抱え込まずに、誰かと共有する」ということは、ダブルケアによる精神的負担を軽減する重要なポイントといえそうです。

一般社団法人ダブルケアサポート
http://wcaresupport.com/

施設の一時利用などで「ほっと一息」つける時間を

ダブルケアに直面した場合、真面目な人ほど「自分がすべてをやらなければいけない」と思い込み、問題を一人で抱え込んでしまいがちですが、精神的なストレスや肉体的な疲れで「共倒れ」になるのを防ぐためには、介護サービスや生活支援サービスといったサポートを利用したり、悩みを人に相談したりするなど「他人の力を借りる」ことも大切です。

また、常に親から目が離せないことがストレスになっているような場合には、自分がダブルケアに直面していることを認識し、子どもを保育所に預かってもらうように、親にもデイケアやデイサービス、ショートステイといった施設に通ってもらう時間をつくり、短時間でも自分が「ほっと一息」つける時間を持つことも、ダブルケアを乗り切るコツといえるでしょう。

▼参考資料
・育児と介護のダブルケアの実態に関する調査(ポイント) 内閣府男女共同参画局
http://www.gender.go.jp/research/kenkyu/pdf/ikuji_point.pdf

・ダブルケアに関する調査2017 ソニー生命保険株式会社・ニュースリリース
http://www.sonylife.co.jp/company/news/28/nr_170317.html

・育児と介護「ダブルケア」支援拡充へ 京都府、相談態勢整備 京都新聞
http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20160918000061

・「ダブルケア」独自に相談窓口 堺市、全7区役所に設置 産経ニュース
http://www.sankei.com/region/news/161115/rgn1611150066-n1.html

・ダブルケア、孤立を防げ…育児と介護、悩み共有 ヨミドクター(読売オンライン)
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20170424-OYTET50030/

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