2017年07月19日

もしも徘徊が始まったら・・・認知症による徘徊とその対策

高齢者

認知症の方を見守る家族にとって、大きな負担を伴うのが「徘徊」と呼ばれる行動です。徘徊は、家の中をうろついたり、勝手に外を出歩いて道に迷ったりする状態を指します。言葉の意味そのものは「あてどなくさまよう」ことですが、実は、そこに大きな誤解があります。なぜ徘徊は起こるのでしょう? その原因を正しく理解し、対策について考えていきましょう。

高齢者の「徘徊」は大きな社会問題に

●認知症による行方不明者 “1万5千人”という現実

ここに衝撃的なデータがあります。警察庁のまとめによると、2016年に認知症が原因で行方が分からなくなった人の数は、1万5432人にものぼるというのです。これは実に前年比の26.4%増、ここ数年は増加の一途をたどっています。

認知症では注意力や感覚が衰えるため、転倒はもとより、車道の真ん中を歩いたり、線路内に立ち入るなど大変な危険が伴い、夏には熱中症、冬には凍死などの心配もあります。実際、亡くなった状態で発見される行方不明者も少なくありません。見守る家族はもとより、地域全体での有効な対策が求められる深刻な事態です。

「平成28年における行方不明者の状況」-警察庁生活安全局生活安全企画課
https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/fumei/H28yukuehumeisya.pdf

徘徊を引き起こす意外な“理由”とは?

杖をつく高齢者

●探しものがみつからない

では、そのような危険が伴う徘徊という行動は、なぜ起こるのでしょうか。

徘徊は、医学的には自分が今いる場所や置かれている状況がわからなくなる「見当識障害」が主な原因です。しかし冒頭にも書いた通り、徘徊をする方は単に「あてどなくさまよっている」のではありません。実はご本人なりに理由(思い込み)があって歩き回るケースが非常に多いのです。

例えば・・・

・「自分の部屋がわからない」ので、家の中を歩き回る。
・「今いる場所が自分の家ではない」ので、帰ろうとする。
・「まだ現役で仕事をしている」ので、会社へ行こうとする。

絶えず「探しものが見つからない」状態ですから、家の中でも外でも歩き続けるため、夜通し歩いてはるか遠くで保護されるといった例が後を絶ちません。

●不安やストレス

住んでいる場所や家族との関係など、環境に対する不安やストレスも、徘徊を引き起こす動機となります。周囲の状況に居心地の悪さや不安を感じたり、見当識障害により今いる場所がわからなくなると、幸せだったころの住まいに「帰ろう」と家を出てしまうのです。

●前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は、「知・情・意」を司る前頭葉・側頭葉が委縮して起こる認知症です。社会的に不適切な行動、礼儀やマナーの欠如、衝動的で無分別や無頓着な行動が見られ、徘徊においては家の中や近所を一周して同じ場所に戻ってくるなど、ひとつの行動パターンを繰り返すのが特徴です。

ここに気をつけたい!徘徊を見守る心構え

チェック

●無理に引き止めない

出ていこうとする方を無理に止めると、「家に閉じ込めようとしている」などと感じ、かえって反発が強まります。玄関ドアを壊したり、窓から出ようとするなどの危険につながります。

●その人の過去や思い込みに話をあわせる

その人に思い込みがある以上、「家はここでしょ!」などと叱りつけても、本人は理解できません。今も会社に通っていると思い込んでいる人には、「今日は会社休みですよ」、家に帰ろうとしているなら、「夕飯でも一緒にどうですか」というようにその人の思い込みに合わせた対応をすることが大切です。

●一度、外出させてから帰宅を誘導

出かけたいという欲求を抑えつけると、そのストレスがほかの異常行動につながることも考えられます。あえて自由に外出してもらいつつ、実はこっそり付いていき、偶然出会ったふりをして「家に帰りましょう」と連れて帰ることで、外出できないフラストレーションを回避できるかもしれません。

●迷子のトラブルを未然に防ぐ

徘徊への対応で最も理想的なのは、ご本人と一緒に出かけてトラブルがないよう見守ることです。その際には、交通事故や転倒の危険、途中での休憩や熱中症対策の水分補給などにも十分注意してあげましょう。しかし特に仕事を抱える家族などにとっては、一緒に出かけることが難しいのが現実です。やむを得ずご本人ひとりで外出する場合は、次のような対応を心がけるべきです。

・知らない間の外出を防ぐため、ドアに音の出るセンサーを設置する。
・洋服の襟や靴の中敷きに名前と連絡先を記入したり、ワッペンを付ける。
・住所、名前など連絡先を記入した迷子札を洋服につける。
・財布や定期入れに連絡先のカードを入れる。
・夜の徘徊に備えて、車からでも発見しやすいよう反射素材を身につけさせる。
・外での転倒を防ぐため、サンダルなどではなく歩きやすい靴をはかせる。
・徘徊追跡のためのGPS器具をいつも持ち歩くカバンなどに入れておく。

夜間に起こる徘徊への対応策

●見守りサービスの利用

ここでは、「夜間の徘徊」に対応するためにどのような方法があるのかみていきたいと思います。夜間に起こる徘徊は、介護をする家族も就寝中のため止めることが難しいうえに、深夜に警察から呼び出されることが続くと生活リズムを崩して倒れてしまうこともあります。

対策としてまず考えてほしいのが、夜間の見守りをしてくれるサービスの利用です。夕方以降に食事づくりなどをしながらヘルパーが一緒に過ごしてくれる夜間見守りサービスや、夜間巡回型の訪問看護のほか、見守りネットワークなど自治体によるサービスもあります。人によるサービス以外には、家の出入り口に徘徊予防センサーシステムを取り付けることもひとつの手として考えられます。

暮らしのリズムに合わせた見守りを

そのほかには、徘徊する本人が夜間にしっかり睡眠をとれるようにする対策が考えられます。たとえば、日中に趣味のサークルなどに通ったり、デイサービスを利用して体を動かし「夜に寝てもらう」生活リズムを作ることも大切です。また症状によっては、医師に相談のうえで睡眠導入剤や精神安定剤などの薬を服用し、夜間の睡眠を確保するのも方法のひとつです。

それぞれのサービス内容や利用料金をしっかり調べたうえで、ご自身に必要だと思われるサービスをまずは活用してみることをおすすめします。なお徘徊の程度に応じて、早急に要介護認定を申請し、必要があれば施設への入居を考えることも大切です。

万が一、行方がわからなくなったら

●まず警察に連絡を!

万が一、徘徊で行方がわからなくなった場合は、すぐに最寄りの警察署に捜索依頼を出しましょう。事前に警察署や交番に顔写真・住所氏名を届けておけば、保護された際にもすぐ連絡を受けることができます。

●地域包括支援センターに相談

警察への連絡が済んだら、地元の地域包括支援センターなどにも届けを出しましょう。自治体によっては徘徊する方を発見するための『SOSネットワーク』などの連絡網を構築しており、行方不明者の情報を共有しています。また日頃からご近所や民生委員の方、行きつけのお店などに事情を話し、見かけた時にご本人への声がけや連絡をもらえるよう伝えておくことも大切です。

ここまで認知症による徘徊の理由や対策について見てきました。もしも徘徊が始まったら、家族ひとりで解決することは非常に困難です。「人に迷惑をかけたくない」と思いつめず、自治体、警察、外部サービス、そして地域との連携を忘れずに、大切な人の安全を守ってください。

介護ぱど運営事務局