2017年07月12日

【介護離職】はデメリットが多い?仕事と介護を上手く両立するためには

悩む女性

近年、介護離職の増加が社会問題となっています。

介護離職とは、親など身近な人の介護を理由に仕事を辞めることを指す言葉ですが、政府の資料によればこうした介護離職者は年間10万人を超えるといわれており、今後も増加することが予想されています。

介護離職者は年間10万人、8割が女性というデータも

内閣府が総務省のデータをもとに作成した資料によれば、2011年10月から2012年9月の1年間に介護を理由に離職した人の数は10万1100人であり、そのうち約8割にあたる8万1200人が女性となっています。

また、厚生労働省が2013年におこなった「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」では、介護離職をした正社員の5割以上(男性56.0%、女性55.7%)が「(できれば仕事を)続けたかった」と回答しており、仕事を「続けたくなかった」と回答した人は男女ともに2割程度(男性21.7%、女性19.2%)にとどまっていることも判明しています。

7割を超える人が介護離職で「経済面での負担が増した」と回答

通帳と電卓

上記の調査からは、介護離職をした人の多くが仕事を続けることを望んでいたにも関わらず、仕事と介護の両立の困難さから仕事を辞めざるをえなかった状況が伺えますが、同調査では介護離職をした正社員のうち男性では約5割(51.1%)、女性では3.5割(35.7%)の人が1年以内に再就職をしていることも明らかになっています。

また同調査における「離職後の変化」についての質問では、7割を超える人が「経済面での負担が増した」と回答しており、精神面・肉体面での負担が増したと回答した人もそれぞれ半数を超えていました(「精神面で負担が増した」64.9%、「肉体面で負担が増した」56.6%)。介護離職については、再就職後の所得が離職前よりも低くなってしまうケースも多いといわれていますが、これらのデータからは負担を軽減するために仕事を辞めたのにも関わらず、離職によりかえってさまざまな負担が増してしまう介護離職者の厳しい現実も伺えます。

「介護離職をした理由」でもっとも多いのは?

ちなみに厚労省の調査では、40歳代~50歳代の介護離職者(離職前は正社員)1000人に、「介護離職をした理由」についても尋ねていますが、男女ともにもっとも多かった回答は「仕事と介護の両立が難しい職場だったため」というものであり(男性62.1%、女性62.7%)、次いで多かったのが「自分自身の心身の健康状態が悪化したため」という回答でした(男性25.3%、女性32.8%)。

近年、介護者であることや介護休業を取得したことなどを理由に職場で不当な扱いを受けるケアハラ(介護ハラスメント)が社会問題となっていますが、上記の調査結果からは、仕事をしながら介護をおこなう人が増えている状況に、職場の理解や支援が追いついていない実情も伺えます。

法律で定められた介護者を支援する制度とは

黒板

上記のような状況を受けた政府は、2017年1月に職場におけるケアハラの防止措置を事業主に義務づけることを盛り込んだ改正育児・介護休業法を施行しました。同法では仕事と介護の両立支援や介護離職の防止などを目的として、下記のような改正もおこなわれています。

・介護休業の分割取得…介護を必要とする家族1人につき、通算93日の介護休業を3回まで分割して取得することが可能に(従来は1回まで)。
・介護休暇の半日取得…介護休暇については半日(所定労働時間の2分の1)単位での取得が可能に(従来は1日単位のみ)。
・介護のための所定労働時間の短縮措置など…事業主には家族の介護をする労働者に対して、要介護状態にある家族1人につき「所定労働時間の短縮」「フレックスタイム制度」「始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ」「労働者が利用する介護サービス費用の助成やそれに準ずる制度」のいずれかの措置を講じることが義務づけられ、労働者は介護休業とは別に利用開始から3年で2回まで制度の利用が可能に(従来は介護休業と通算して93日以内)。
・介護のための所定外労働時間の制限(残業の免除)…家族の介護をする労働者は、対象となる家族1人につき、介護の必要がなくなるまで残業の免除が受けられる(今回の法改正により新設)。
・介護休業給付金の引き上げ…介護休業中に支給される介護休業給付金の割合を賃金の40%から67%に引き上げ(介護休業の開始が2016年8月以降の場合)。

また、上記以外にも育児・介護休業法においては、介護をおこなう労働者について「転勤への配慮」をおこなうことや、家族の介護をする労働者が申し出た場合には深夜(午後10時~午前5時)に労働させてはならないとする「深夜業の制限」なども事業主に対して義務づけられています。

介護休業・介護休暇を取得できる条件は

上記のように法律では、親が介護を必要とする状態になった際に休暇を取得できる制度として介護休暇介護休業が定められていますが、この2つの制度は内容に大きな違いがあるため、条件や取得方法について詳しく見ていきましょう。

まず介護休暇とは、労働者の親が要介護状態になったときに、1年間に5日まで休暇を取得できる制度です(介護の対象となる家族が2人以上の場合は1年に10日まで)。この制度は、家族の介護をする労働者であれば、正社員に限らずパートやアルバイトでも利用できますが(日々雇用者を除く)、勤続6ヶ月未満の人や週の所定労働日数が2日以下の人は、労使協定がある場合には利用できない場合もあります。また介護休暇は半日単位で取得できるため、急な通院の付き添いなど緊急を要する状況で使用するのに適した制度であり、手続きは「当日の電話連絡」などでも構わないとされています。ただし介護休暇については、休暇中の賃金の支払い義務が法律で定められておらず、休暇の利用中は無給となるケースも多いため、有休休暇を利用できる状況であればそちらを利用したほうが良いかもしれません。

一方、介護休業については利用できる期間が、介護が必要な家族1人につき最長3ヶ月(93日間を3回まで分割して取得することが可能)と比較的長いことから、介護のためにある程度まとまった休みが必要な場合に利用するための制度といえます。また仕事を休んでいる間の賃金についても、介護休業の場合は原則として休業前の賃金の67%にあたる金額が介護休業給付として支給されます(ただし、「介護休業を開始した日までの2年間に雇用保険の被保険者期間が12ヶ月以上ある」などの受給要件あり)。

ちなみにパートやアルバイト、派遣社員といった非正規雇用の労働者であっても、「同一の事業主に1年以上雇用されている」「介護休業の開始日から93日を経過した後も、引き続き雇用されることが見込まれる」などの条件を満たしていれば、介護休業の制度を利用することができます。また介護休業の申請手続きについては、原則として休業を開始する2週間前までに、家族が要介護状態にあることや、休業の開始期間や終了期間を明らかにして、事業主に書面などでおこなうことが定められています。

制度を知らない人が多い実情も

笑顔の女性

上記のように法律で定められた介護休業・介護休暇の制度ですが、政府の調査では、2012年の段階で介護をしている雇用者における介護休業の取得者の割合が3.2%、介護休暇の取得者が2.3%と極めて低いことが報告されています。

また、こうした取得率の低さを裏付けるように、オリックス・リビング株式会社が2016年に40代の男女を対象におこなった「介護に関する意識調査」では、82.5%の人が介護休業制度について「内容を知らない」と回答していました。同調査では、介護休業制度を利用することについて、多くの人が「収入が減るのではないか」「(職場に)復帰しづらい」といった不安を持っていることも明らかになっており、法律で定められたものとはいえ、制度の利用に抵抗がある人が多いことも報告されています。

専門家に相談し、利用できる制度や施設は利用すること

近年では介護者を支援することを打ち出している企業も徐々に出てきてはいますが、介護離職を防ぐためには、可能であれば早い段階から自分が介護をしていることを職場でオープンにしておくなど、自分から休暇を取りやすい状況を作っておくことも必要といえます。

さらに親に介護が必要になったときや、病気やケガなどで介護が必要な状態になりそうな場合は、早い段階で市役所の高齢者福祉課など介護を扱う部署や地域包括支援センター、社会福祉協議会などに連絡し、ケアマネジャー(介護支援専門員)などの専門家に相談する体制を整えておくことも、1人で介護の負担や不安を抱え込まないためには大切といえるでしょう。

地域包括ケアシステム(ページ下部に全国の地域包括支援センターの一覧を記載) 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/

都道府県・指定都市社会福祉協議会一覧
http://www.shakyo.or.jp/links/kenshakyo.html

市区町村社会福祉協議会のホームページ(検索方法)
http://www.shakyo.or.jp/links/sichouson.html

また仕事と介護の両立を続けていくためには、息抜きやストレス解消ができる「自分の時間」をいかに確保するかということも重要となりますが、こうした場合に有効なのが、デイケアやデイサービスといった通所型の施設やショートステイ、老人ホームや介護老人保健施設(老健)、認知症グループホームといった入所型施設を利用することです。

これらの施設を利用するにあたっては、料金の面で難しいと考えてしまう人も多いようですが、施設の利用を検討する際には、「在宅で介護をおこなうことになった場合」や「介護の負担から仕事を辞めた場合」を想定した上で介護にかかる費用や収入について計算し、どちらが経済面や精神面、肉体面での負担が軽減されるか考えてみることも必要といえるでしょう。

▼参考資料
・「介護離職に関するアンケート調査」 株式会社 東京商工リサーチ
http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20161227_01.html

・介護を理由に、会社を辞める方が増えています 内閣府男女共同参画局
http://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2014/201409/201409_05.html

・仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/dl/h24_itakuchousa05.pdf

・育児・介護休業法 改正のポイント 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/pdf/ikuji_h28_06.pdf

・育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000165876.pdf

・介護休業給付について ハローワークインターネットサービス
https://www.hellowork.go.jp/insurance/insurance_continue.html#g3

・第9回「介護に関する意識調査」プレスリリース オリックス・リビング株式会社
http://www.orixliving.jp/company/pdf/pressinfo_161107.pdf

介護ぱど運営事務局