2017年08月02日

【介護による腰痛を防ぐために】介護職員が実践している対策とは?

腰痛に悩む女性

介護職員の多くが悩まされているといわれる「腰痛」。

介護職員の労働組合である「日本介護クラフトユニオン」(NCCU)が2015年におこなった調査では、実に半数以上(56.8%)の介護職員が「腰痛がある」と回答していました。また厚生労働省の資料においても、介護職における腰痛の発生率が高いことや、介護現場で起こった労働災害において腰痛が多くの割合を占めていることなどが報告されています。

一方、こうした腰痛に悩むのは介護の仕事に従事する人ばかりではありません。家庭で家族の介護をおこなう人においても、日々の介護による腰痛を訴える人は多く、突然のギックリ腰や慢性的な腰痛を予防・緩和するための対策が必要といえます。

介護職員が考える腰痛の原因とは?

上記のNCCUの調査において、「腰痛がある」と回答した介護職員にその原因を尋ねたところ、もっとも多くの人があげていたのが、「中腰姿勢になる機会が多いため」(26.2%、3つまで回答可)というものでした。このアンケートではほかにも「負担の大きい介助を行ったため」(16.9%)、「不自然な体勢で介護を行ったため」(13.8%)といった腰痛の原因を多くの人があげていましたが、これらの回答からは「介護の際の姿勢」や「身体に無理な負荷のかかる介助」が介護における腰痛の大きな原因となっていることが伺えます。

腰痛が発生する3つの要因プラス1

ちなみに厚労省の資料では、腰痛の発生に関連するおもな要因として下記の3つをあげています。

動作要因:「重い物を持つ」「長時間おなじ姿勢を取る」「急に姿勢を変える」ことなどにより、腰にかかる過度な負担や負荷。
環境要因:「身体が寒冷にさらされる」「車の運転などで全身が長時間の振動にさらされる」「暗い場所や散らかった場所、滑りやすい場所などで移動や作業の安全が確保しにくい」など、職場や住宅などの環境的な要因。
個人的要因:年齢、性別や体格や筋力、生活習慣、あるいは椎間板ヘルニアや骨粗しょう症といった持病などに関係するもの。「自分より体格の大きい相手を介助する」「介護により十分な睡眠や休息がとれない」といった要因もこれにあたります。

さらに近年では、対人関係によるストレスに代表されるような「過度な精神的緊張」も腰痛の原因として注目されているそうです。そのため、腰痛を予防・緩和するには、上記の3つの要因や精神的なストレスを軽減することが重要といえます。

腰痛を防ぐ「正しい介助法」とは?

介護職員

一方、上記のNCCUのアンケートで介護職員に腰痛の予防策について質問をしたところ、多くの人があげていたのは「正しい介助法の実践」(24.3%)、「腰痛体操」(19.2%)、「腰痛ベルトの着用」(17.9%)というものでした(3つまで回答可)。

それでは、腰を痛めない「正しい介助」をおこなうには、どのような点に注意すればよいのでしょうか?

医療・福祉の現場において要介護者や患者の「移動介助」の基本とされている理論・技法にボディメカニクスがあります。もともとボディメカニクスとは、骨や筋肉、関節といった人間の機能が相互に関係する仕組みを指す言葉ですが、介護の現場ではこうした人体の仕組みを利用して、より自然で無理のない介助をおこなう技術をボディメカニクスと呼ぶ場合もあります。

ちなみに介助におけるボディメカニクスには下記のような原則があります。

1.相手の体を小さくまとめる
たとえばベッドに寝ている相手を動かす場合には、介助される人に腕を胸の前で組んでもらったり、ヒザを曲げてもらったりするなどして、体をできるだけ小さくまとめてもらうことで、移動に使う力を軽減できます。

2.相手にできるだけ近づく
立った状態での介助のときなどは、自分の重心を介助する相手の重心に近づけて密着することで、より力が伝わりやすくなります。

3.体をねじらない
上記のアンケートでも報告されているように、体をねじった不自然な体勢での介助は腰痛を引き起こす原因となります。介助をおこなう際は、体をねじらずにまっすぐ保つことを心がけましょう。

4.両足を開き「支持基底面」を広くする
体を支えるために床に接している部分(立っているときなら足の裏)を結んだ範囲を「支持基底面」をいいますが、この「支持基底面」が広いほど体は安定するといわれています。立って介助をおこなう際は、肩幅ぐらいに足を開き、体を安定させましょう。

5.重心を低くする
上記の「支持基底面」を広くすることに加え、腰を落として重心を低くすることにより、介護者の体はより安定しやすくなります。

6.水平に移動するように力を使う
たとえばベッド上で要介護者を動かすときなどは、上下に持ちあげて動かすのではなく、水平に滑らせるように移動させるほうが介護者の負担は軽くなります。

7.大きな筋群を使う
上記のように要介護者を水平に動かす場合でも、腕の力だけでおこなうのではなく、ヒザの屈伸なども利用して動くと介護者の負担は軽減されます。このように要介護者を動かす場合には、手や腕など末端の部分だけでおこなうのではなく、腹筋や背筋、足腰などできるだけ全身の力を連動させて使うようにすることが大切です。

介護職員が実践する1日5分の簡単な腰痛体操

ストレッチする女性

上記のアンケートでも、多くの介護職員が腰痛への予防対策として腰痛体操をあげていましたが、ここでは介護職員が実践する自宅で簡単にできるストレッチをご紹介します。

【腰痛予防ストレッチ その1】
1.あお向けに寝た状態で、片足のヒザを両手で抱えて、息を吐きながら胸に引きつけます。足が胸につきにくい場合は、無理にくっつけなくても大丈夫です。
2.そのまま20~30秒間、ヒザを胸に引きつけた状態を保ちます。この間、呼吸は止めないように注意します。
3.息を吸いながらゆっくり足を戻し、反対側の足も同じようにおこないます。

【腰痛予防ストレッチ その2】
1.あお向けに寝た状態で両ヒザを曲げ、両手でそれぞれ左右のヒザを持ちます。ヒザとヒザは軽くくっつくぐらいにしておきます。
2.息を吐きながら腕の力でヒザを胸の方にゆっくりと引きつけ、息を吸いながら戻します。
3.上記の動作を6回繰り返します。

こうした腰痛体操は、すこしずつでも毎日おこなうことで効果を発揮します。可能なら朝晩、無理なときは夜寝る前だけでもこまめに実践してみてくださいね。

腰痛ベルトについて

また、上記のアンケートにもあるように、介護職員で腰痛の持病がある人においては腰痛ベルトやサポーターを使用している人も多く見られます。こうしたベルトやサポーターは、100円ショップやドラッグストアで売っている手軽なものから、本格的な医療用のものまでさまざまな種類がありますが、腰痛がそれほど深刻でなければ、まずは手軽なものから試してみることをお勧めします。

注意しなければならないのは、ベルトやサポーターは腰回りの筋力を補助する器具であるため、常につけっぱなしでいると筋力の低下を招いてしまうおそれがあるという点です。高齢による筋力の衰えなどで常に腰を補助・固定しておく必要がある場合は別ですが、健康な人の場合は、基本的にこうしたベルトやサポーターを使用するのは介助などで腰に負荷がかかる場合にとどめておきましょう。 また腰痛が深刻な場合は医療機関を受診し、症状にあったコルセット等を選ぶことも大切です。

腰痛の予防にはこまめなケアと息抜きが大切

腰痛の予防や改善には、ストレッチなどでこまめなケアをすることと合わせて、ストレスを溜めないように自分なりに息抜きの時間を作ることも重要です。またギックリ腰などの急激な腰痛が起きた場合や、慢性的な腰痛に悩まされている場合は、医療機関や信頼のおける整骨院などを受診することや、十分な休息を取ることも、症状を改善するためには大切といえるでしょう。

▼参考資料
・「腰痛と介護ロボットについてのアンケート」結果発表 UAゼンセン日本介護クラフトユニオン
http://www.nccu.gr.jp/topics/detail.php?SELECT_ID=201509030003

・介護業務で働く人のための腰痛予防のポイントとエクササイズ 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000041110.pdf

・ボディメカニクス 公益社団法人 北海道勤労者医療協会 勤医協中央病院
http://www.kin-ikyo-chuo.jp/common/pdf/nurse/manual_001.pdf

介護ぱど運営事務局