2017年09月13日

【親の介護を放棄したい…】介護放棄は罪になるの?

手を取り合う

近年、高齢者の介護を家族が放棄してしまう介護放棄が社会問題となっています。

2017年に沖縄タイムスが「沖縄県内で65歳以上の高齢者を在宅で介護する人」を対象としておこなった調査では、全体の約4割(41.8%)の人が、介護のつらさから「介護放棄を考えたことがある」と回答していました。また同調査では「介護中に暴力を振るった経験がある人」も1割以上(14.2%)いたことも報告されていますが、介護放棄もこうした高齢者虐待のひとつといえるかもしれません。

介護放棄とは

介護放棄はネグレクト(neglect)とも呼ばれていますが、この言葉にはもともと「放置すること」「無視すること」といった意味があり、これまではおもに子どもに衣食住などの適切な保護や医療ケア、教育などを与えない児童虐待を指す用語として使われてきました。介護放棄については、この子どもに対するネグレクトを高齢者に置き換えて考えてもらえばわかりやすいかもしれません。

たとえば食事や排泄、入浴といった日常生活に必要な行為を1人でおこなうことができない(=介護を必要とする)高齢者に対して、介助をおこなわず放置したり、食事を与えなかったりといった行為は介護放棄にあたります。また高齢の家族に医療機関の受診や介護サービスの利用が必要であることを知りながら、こうした機会を与えず放置することも、やはり介護を放棄していることになります。

さらに、介護放棄がエスカレートすると、介護が必要な高齢者を置き去りにして、介護者であるはずの家族が家を出てしまうという事態を引き起こす場合もあります。

親の介護を放棄すると犯罪になるの?

介護

それでは、親の介護を放棄すると罪になるのか、という問題ですが、高齢の親が独力で生きていくことができないことを知りながら、これを放置した場合は保護責任者遺棄という罪に問われます。

保護責任者遺棄罪は刑法218条に定められており、乳幼児や高齢者、病人、障がい者などを保護する責任のある人が、こうした義務を放棄した場合には3月以上5年未満の懲役が科せられるとされています。しかし親の介護放棄に保護責任者遺棄罪が適用されるかどうかは、被害者・加害者双方の状況によっても大きく左右されます。

2015年、三重県で寝たきりの母親に対して食事や排泄などの適切な介護をおこなわず、自宅で死なせた上に死体を遺棄したとして、同居していた娘が保護責任者遺棄致死と死体遺棄の罪に問われた事件がありました。

この事件の裁判において被告は懲役6年の実刑判決を受けていますが、裁判では医師の治療や介護サービスを受けさせるのに困難な事情がないにも関わらず、母親が死ぬまで放置していたという被告の介護放棄の姿勢も重要視されたとのことです。上記の事件は極端なケースともいえますが、少なくとも独力で生活していくことができない同居の親に対して、特別な事情がないにも関わらず介護放棄をおこなった場合は、罪に問われる可能性が高いといえるでしょう。

なぜ介護放棄が起きるのか?

上記の三重県で起きた事件の被告は、病院に薬剤師として勤務しており、親に医療機関を受診させたり、介護サービスを受けさせたりする経済的な余裕があったにも関わらず、これらを利用せず、自宅において1人で親の介護をおこなっていたといいます。

このように病院や介護サービスを利用しなかった理由について被告は、近所の人などから「自宅で介護できるのに親を施設に預けている」と思われたくなかったと裁判で述べたそうです。しかし無理をして1人で介護を抱えこんだものの、母親の健康状態は悪化。やがて寝たきりとなった母親に対して、被告はおむつの交換や食事を与える回数を減らすなど、介護放棄の状態に陥っていったといいます。

この事件においては、介護を1人で抱えこんでしまったことが、介護の疲れやストレスを増加させ、介護放棄を招いたと見ることもできます。専門機関への相談や介護サービスの利用をおこなわずに1人で介護をおこなおうとすると、親の要介護度や認知症が重くなるなどの変化が起きた場合に、自分1人では背負いきれなくなってしまい、介護の疲れやストレスから介護を放棄する以外の選択肢が見えなくなってしまうこともあるのです。

介護放棄を防止するには「相談すること」

それでは、介護放棄を防ぐためにはどうすればよいのでしょうか?

もっとも重要な対策としてあげられるのが、介護について相談をすることと、介護サービスなどの制度について正しい知識を持つことです。まず、ひとつ目の「相談」についてですが、介護について相談する相手としては「家族や友人などの身近な人」と「介護や福祉の専門家」の2種類がいることを知っておきましょう。たとえば、家族や友人に気軽に介護の悩みや愚痴をしゃべることができれば、それだけで介護のストレスは軽減されます。また身近に介護の経験者がいる場合には、経験者ならではの具体的なアドバイスがもらえるかもしれません。

また、こうした相談相手が身近にいる・いないに関わらず、介護をスムーズにおこなう上で必要となるのが、介護や福祉の専門家に相談することです。

これは二つ目の「介護サービスについて正しい知識を持つこと」にもつながります。介護を必要とする親が要介護(要支援)認定を受けているならば、担当のケアマネジャー(介護支援専門員)が介護者の相談にも乗ってくれますし、そうでなければ各地域に設けられた地域包括支援センターが高齢者の介護・福祉に関するあらゆる相談を受け付け、必要な場合は専門機関につないでくれます。

どのような介護サービスが利用できるか、価格はどれぐらいか、といった問題もこうした専門家であれば適切に答えてくれるでしょう。また要介護者が入院中で退院後の生活が心配な場合には、医療機関のソーシャルワーカー(医療ソーシャルワーカー)が相談を受け付けてくれるはずです。さらに経済的な理由で病院や介護サービスが利用できないといった悩みがある場合は、地域の福祉事務所に相談する方法もあります。

なお、こうした専門家に相談する際には、相談内容を具体的に包み隠さず話すこと(経済面の悩みなら具体的な金額を示して説明するなど)が重要となります。介護に関する悩みや不安は、介護をする人ならば誰にでもあるものですし、専門家は多くの人のさまざまな相談に対処している人たちです。「人からどう見られるか」ということはこの際気にせず、素直に自分の置かれた状況を相談してみましょう。

全国の地域包括支援センターの一覧 厚生労働省
(ページ下部に各都道府県へのリンク有り)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/

介護サービスや施設を利用することの重要性

介護士

また、介護の疲れやストレスから介護に「息切れ」してしまいそうなときは、介護保険による介護サービスや、高齢者向けのさまざまな施設を利用することも重要となります。ここではこれらのサービスの利用について解説していきます。

・要介護(要支援)認定を受ける
公的な介護保険は、原則1割(一定以上所得のある人は2割)の自己負担でさまざまな介護サービスを利用できる制度ですが、これらのサービスを受けるためには要介護(要支援)の認定が必要となります。親が病気やケガ、加齢などにより食事や入浴、排泄といった日常生活に必要な動作を1人でおこなうのが困難になった場合には、まずは役所の介護保険課や地域包括支援センターで要介護(要支援)認定の申請手続きをおこないましょう。

・訪問介護を利用する
公的な介護保険で利用できる代表的な介護サービスのひとつに、訪問介護(ホームヘルプサービス)があります。保険の範囲内でどれぐらいサービスを利用できるかは要介護(要支援)のレベルによって違いますが、訪問介護では食事や入浴、排泄の介助、通院や外出の付き添いといった身体介護と、調理や掃除、洗濯、買い物などの生活援助の2種類のサービスを受けることができます。高齢者の場合は、「生活空間に他人に入られる」ことをいやがるケースも多く見られますが、介護をスムーズに進めていくためには、訪問介護が介護者・要介護者の双方にとって必要であることを説明し、まずは週1回程度の利用から徐々に慣れてもらうのが望ましいといえるでしょう。

なお、介護保険で訪問介護が利用できるのは要介護1~5の認定を受けた人であり、要支援1・2の人は訪問介護に準じた介護予防訪問介護のサービスを利用することになります。

・さまざまな施設を利用する
要介護(要支援)の認定を受けると、施設に通ってリハビリや機能訓練、食事や入浴といったサービスを受ける通所介護(デイサービス・デイケア)を利用することができます。こうしたサービスの利用は、高齢者にとって家の外で他者と触れ合う貴重な機会となる一方で、介護者にとっては介護から解放される「自分の時間」を持つことにつながります。

また介護保険では1泊から1週間程度の短いあいだ施設に入所して食事や入浴などのサービスを受けるショートステイ(短期入所生活介護・短期入所療養介護)も利用できますが、これは介護者が出張や旅行などで家を空けなければならない場合や、介護疲れから一定期間の休息をとって回復したい場合に適したサービスであり、将来的に施設への入所を見据えている場合には「お試し」として、施設での暮らしがどのようなものか体験してもらう意味でも有効といえます。

さらに長期入所型の施設としては、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、介護老人保健施設(老健)、認知症高齢者グループホーム(認知症対応型共同生活介護)など、さまざまな特色を持った施設があげられますが、在宅での介護が介護者の大きな負担になっている場合や、在宅での介護に将来的な不安を感じている場合には、上記のような訪問介護やデイサービス、ショートステイなどを利用しながら、予算や状況にあわせた施設への入所を検討していくことも大切といえるでしょう。

介護サービスや施設の利用は「普通のこと」という認識を持つ

たとえ介護を放棄することができなくても、その一部を施設やヘルパーといった他者に肩代わりしてもらえれば、介護者の負担は大幅に軽減されます。

上記の三重の事件の被告のように、まだまだ施設や介護サービスの利用に抵抗がある人も多いと思いますが、高齢化が進行し、介護を必要とする人の割合が増加している現代においては、施設や介護サービスの利用は「普通のこと」であり、虐待や介護うつなどの事態を招かないためにも必要なことといえます。また、親の認知症や要介護度が進行し、常に目が離せない状態になった場合、家族が1人で介護を抱えこむのは大変な苦労や困難を伴います。

できればこうした状態になる前に、ケアマネジャーなどの専門家に相談のうえ、徐々に訪問介護や施設の利用を進めていくことが、要介護者に適切な介護を提供し、介護者の負担を軽減するためにも大切といえるでしょう。

▼参考資料
・追い詰められる在宅介護、現場からのSOS 沖縄タイムス
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/100102

・保護責任者遺棄罪 弁護士ドットコム
https://www.bengo4.com/c_3/c_1020/d_7234/

・母の遺体、キャリーケースに詰め捨てた…「介護ができない」と噂されたくなかった娘の〝見栄〟断罪 産経WEST
http://www.sankei.com/west/news/150805/wst1508050003-n1.html

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