2017年09月20日

【介護離婚】介護が嫌で離婚してしまう前に気をつけたいこと

離婚届

近年、中高年の離婚が増加しているといわれていますが、なかでも最近クローズアップされるようになったのが、親や義理の親の介護が原因で離婚に至る介護離婚の問題です。

ここでは介護離婚に至る理由や予防策、離婚時の年金分割制度などについて解説していきます。

増加する熟年離婚

厚生労働省がおこなっている「人口動態統計」によると、2016年の国内における離婚件数は21万7千件。同調査によれば、1966年における離婚件数は7万9432件とのことなので、国内における離婚件数はこの50年のあいだに2.7倍以上に増加したことになります。

それでも離婚件数そのものは、2002年の約29万件をピークに近年はやや減少傾向となっていますが、かわって注目されているのがいわゆる熟年離婚の増加です。厚労省の統計によれば、1970年における離婚件数は5万5968件で、夫が50歳以上というケースはそのうち3564件。これが2015年になると、国内における離婚件数は16万4303件と1970年当時の約3倍に増え、そのうち夫が50歳以上というケースは3万5543件と、1970年当時の約10倍にも増加しているとのことです。

妻への介護の「丸投げ」はNG

離婚

一方、50歳代~60歳代の熟年世代は親の介護を担う人が多いことから、熟年離婚が増えている理由として介護離婚の増加を指摘する声もあります。そして介護離婚においては、妻が夫の親を介護しているケースが多いともいわれています。これは、現代においても「長男の嫁が夫の両親の世話をするのが当たり前」といった風潮が根強く残っていることによるものと思われますが、核家族化が進み、家族のスタイルが多様化している現在においては、こうした考え方が通用しづらくなっているのも実情です。

さらに、近年では結婚後も仕事を続ける女性が増えていることや、晩婚化の影響などにより介護と育児のダブルケアに直面する家庭が多いことなどを考えると、夫が妻に自分の両親の介護を任せっきりにして「丸投げ」してしまうのはNGといえそうです。もし夫が仕事で忙しかったとしても、休日などを利用して介護の方針について夫婦で話し合いの時間を持つなど、夫が積極的に介護に関わる姿勢を見せることや、介護の負担を夫婦間で公平に分担することなども、介護をスムーズに進めていくためには必要といえるでしょう。

また、親の介護といえばどうしても長男の家庭に負担が集中してしまいがちですが、もし夫に兄弟姉妹がいる場合は、介護費用などの経済的負担や肉体面・精神面での負担について家族のあいだで不公平にならないようにキチンと話し合い、たとえば遠方に住んでいて介護が手伝えないなら費用面だけでも協力するなど、家族間で介護負担のバランスを取ることも大切です。

どうしても親の介護というと「押しつけ合い」になってしまうイメージがありますが、親に対する介護は「親孝行ができる最後のチャンス」ともいえます。親の死後に悔いを残さないためには、なんらかの形で家族みんなが介護に関わるようにするのがベストなのかもしれませんね。

年金分割制度が熟年離婚を後押し?

また近年、熟年世代の離婚を後押ししているといわれているのが2007年4月にスタートした年金分割制度です。これは文字どおり離婚時などに夫婦間で年金を分割できる制度ですが、いくつか注意しなければならない点があります。

・適用されるのは厚生年金(公務員の共済年金も含む)のみ
年金の分割制度が適用されるのは、会社員の厚生年金や公務員の共済年金のみです。そのため、自営業などで基礎年金しかない人の場合は分割の対象にはなりません。

・分割できるのは結婚していた期間の年金のみ
妻が夫に分割を請求して受け取れるのは、結婚していた期間に支払った厚生年金・共済年金の50%まで。結婚前や離婚後の期間に支払った年金は対象になりません。

・年金の分割を請求できる期間は離婚して2年以内
年金の分割請求は、原則として離婚や婚姻の取り消しがあったときから2年以内と定められています。

・妻の年金も分割の対象になる
年金分割は夫の年金だけが対象になるわけではなく、妻が公務員であったり、会社員やパートなどで厚生年金に加入したりしていた場合は、これらの年金も分割の対象となります。

・65歳まで分割した年金は受け取れない
離婚して年金分割を請求したとしても、すぐに年金を受け取れるわけではありません。分割した年金を受け取れるのは、通常の年金受給が開始される年齢である65歳になってからです(2017年9月現在)。

また年金分割制度は2段階で実施されており、下記の2種類に分けられます。

・合意分割制度
2007年4月にスタートしたのが、「離婚分割」ともいわれる合意分割制度です。この制度では夫婦が話し合って年金の分割の割合を決めますが(最大50%まで)、夫婦で話がまとまらない場合には、裁判所に分割の割合を決めてもらうこともできます。

なお分割の対象となる年金は、結婚していた期間の厚生年金(共済年金)の報酬比例部分のみとなります。

・3号分割制度
2008年4月からスタートした3号分割は、専業主婦(または主夫)などの国民年金の第3号被保険者(会社員や公務員などの第2号被保険者に扶養されている配偶者)を対象とした制度です。この制度においては分割の割合について夫婦で話し合う必要はなく、一方から請求があった場合には自動的に年金は50%ずつに分割されることになっています。

ただし分割の対象となるのは、結婚していた期間のうち、さらに第3号被保険者であった期間の厚生年金、共済年金の報酬比例部分のみであり、制度が適用されるのは2008年4月分以降の年金のみとなります。

年金の分割でどれぐらいもらえる金額は増える?

年金

ちなみに上記の3号分割においては、制度が適用される期間が2008年4月以降となるため、それ以前の結婚していた期間の分の年金については合意分割となり、夫婦間で分割割合の話し合いが必要となります。さらに第3号被保険者には20歳以上60歳未満という年齢制限もあるため、いまのところ3号分割が適用される期間は極めて短いといわざるを得ません。

また厚生年金の支給額には加入期間の長さが大きく影響するため、厚生年金への加入期間が短い若い夫婦の場合などは、離婚後に年金分割をおこなっても、月々の支給額はほとんど増えないともいわれています。それでは数十年連れ添った熟年夫婦の場合はどうかというと、やはり分割の対象となるのが結婚していた期間の報酬比例部分に限られることなどにより、月々の支給額が2~3万円増える程度という指摘もあります。

ちなみに年金の分割制度は元夫が死亡した後も適用されますが、離婚せずに夫に先立たれた場合、妻には遺族年金が支給されることになります。また通常は、この遺族年金のほうが年金の分割分よりも高額になるといわれています。

年金分割制度がスタートして以降は、夫からの年金分割を視野に入れて離婚を考える人もいるかもしれませんが、年金の分割制度は決して「夫の年金の半分がもらえる」という制度ではないことを理解したうえで、夫婦それぞれの年金の加入状況を考慮し、慎重に判断をおこなったほうがよいといえるでしょう。なお年金分割については、居住する地域の年金事務所に相談しましょう。

介護をスムーズに進めるためには親との距離感も大切

たとえ介護が伴わない場合でも、親との同居が離婚の原因になったというケースは多く見られます。妻から見れば「配偶者である夫は家族でも、その親は他人」であり、まして性格や考え方があわなければ、同居すること自体がお互いに大きなストレスとなってしまうでしょう。

また普段の関係が良好だったとしても、認知症の進行などにより、関係が悪化してしまう例もあります。なかには「義理の親は他人だからかえって割り切って介護ができる」という人もいますが、スムーズに介護を進めるうえで大切なのは、介護をする親や義理の親との距離感なのかもしれません。

たとえば同居が難しい場合には、近くに親に住んでもらう近居という選択肢もあります。また在宅での介護が難しい場合には、親の状態や経済状況にあった施設(特別養護老人ホームや有料老人ホーム、介護老人保健施設やグループホームなど)への入居が、家族(親と自分、妻など)の良好な関係を保つために必要な場合もあります。

たしかに親に対する介護は「最後の親孝行のチャンス」かもしれませんが、その形はさまざまであっていいと思います。親孝行のために、自分や自分の家族が犠牲になってしまっては元も子もありません。親の介護で家庭を犠牲にしないためには、介護について「自分がやってしんどいと思うことは、他の家族にとってもしんどい」ことを十分に理解した上で、介護を誰かに一方的に押しつけることは避け、日ごろの関係性などから、物理的にも精神的にも親とのベストな距離を探ることが重要といえるでしょう。

▼参考資料
・平成28年(2016)人口動態統計の年間推計 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suikei16/dl/2016suikei.pdf

・統計表一覧(表10-6同居をやめたときの年齢別にみた年次別離婚件数) 総務省統計局
https://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&listID=000001157967&requestSender=estat

・離婚時の年金分割 日本年金機構
http://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/kyotsu/jukyu-yoken/20140421-04.html

・熟年離婚で年金分割を請求したい!制度と7つのよくある誤解 エクレシア法律事務所
http://www.ecclesia-rikon.com/bengoshi-blog/nenkinbunkatsu/jukunenrikon-7gokai/

介護ぱど運営事務局