2017年11月08日

【ADLとIADL】介護の現場でよく使われる高齢者のADLとは?

杖をつく手

介護の現場において頻繁に使われるADL(日常生活動作)という言葉をご存じでしょうか?

ADLにはもともと「人が日常生活をおくる上でおこなう活動」という意味があり、高齢者の介護においては、このADLをどの程度自分でおこなえるかが高齢者の状態や能力を評価する尺度となります。

ちなみにADLはBADL(基本的日常動作)IADL(手段的日常生活動作)の2種類に分けられますが、日本の介護施設において「ADL」といった場合には、通常はBADLのことを指します。

BADL(基本的日常生活動作)とは?

BADLは食事やトイレ、移動といった日常的な動作のことであり、これらを項目に分けて評価したものが、介護施設や医療機関でスタッフが利用者(要介護者)の状態を把握・伝達・共有する際の指標となります。

バーセル指数による評価
BADLを評価する尺度として一般的なのが、バーセル指数(Barthel Index:機能的評価)を用いた方法です。

これは日常生活の動作を「食事」「車椅子からベッドへの移動」「整容(洗面や整髪、歯磨きなど)」「トイレ動作」「入浴」「歩行」「階段の昇降」「着替え」「排便コントロール」「排尿コントロール」の10項目に分けて2~4段階で評価し、合計100点満点で採点をするものです。

たとえば「食事」の項目を例にとると、完全に自立して1人で食事をすることができる人は10点、おかずを細かく切ってもらうなどの部分的な介助を必要とする人は5点、食事の動作全般に介助が必要な人は0点となっています。また「車椅子からベッドへの移動」と「歩行」については、最高点が15点と他の項目より高くなっているのも特徴です。

バーセル指数による評価法では、合計が60点以下で「立つ・座る・移動などの動作を中心に介助が必要」、40点以下で「生活全般に介助が必要」と判定されます。また自宅で自立して生活できる目安は60点以上ともいわれていますが、バーセル指数の評価項目に認知機能の評価は含まれておらず、100点満点でも日常生活に支障がないことを示すものではありません。

▼参考資料
・バーセル指数によるADLの評価項目 一般社団法人 日本老年医学会
https://www.jpn-geriat-soc.or.jp

・バーセルインデックスとは何か? レファレンス協同データベース
http://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000027614

機能的自立度評価法

チェックリスト

上記のバーセル指数と異なり、認知機能も評価するのが機能的自立度評価法(FIM)です。FIMでは運動に関する13項目と認知機能に関する5項目を介助の量によって7段階に評価していきます。

FIMにおけるADLの評価項目は下記のとおりです。

<運動項目>
・セルフケア…食事、整容、清拭(入浴時の体を洗う動作)、更衣(上半身)、更衣(下半身)、トイレ動作
・排泄…排尿管理、排便管理
・移乗…ベッド・椅子・車椅子間での移乗、トイレ(便器への移乗)、浴槽・シャワー(浴室や浴槽への出入り)
・移動…歩行・車椅子、階段

<認知項目>
・コミュニケーション…理解、表出(自分の思いをどの程度相手に伝えられるか)
・社会認知…社会的交流(周囲と関わる際の行為や動作)、問題解決(生活上の問題をどの程度自分で判断して解決できるか)、記憶

FIMではこれらの項目について1点(全介助)~7点(完全自立)で採点し、対象となる人の自立度と必要な介護の量を判定します。

▼参考資料
・FIMについて 医療法人 昭和会グループ
http://syowakai.org/?page_id=2920

IADL(手段的日常生活動作)とは?

一方、IADLは上記のBADLよりも高度な能力や複雑な動作をあらわしており、その評価は、おもに高齢者が自宅で生活する際の自立度を判断するために用いられます。

Lawtonの尺度
IADLの評価において一般的とされているのがLawtonの尺度です。この評価法では、「電話を使用する能力」「買い物」「食事の準備」「家事」「洗濯」「移送の形式」「服薬管理」「財産取り扱い能力」の8つの項目について、1項目につき1点または0点で採点していきます。Lawtonの尺度において特徴的なのは、「食事の準備」「家事」「洗濯」の項目は女性のみが対象となる点であり、そのため合計点の範囲も男性が0~5点、女性は0~8点と異なっています。

この評価法では1つの項目につき3~5つの回答が用意され、あてはまるものを1つ選ぶ形式となっていますが、たとえば「買い物」を例にとると、「すべての買い物を自分でおこなう」という回答のみが1点であり、そのほかの3つの回答(「少額の買い物は自分でおこなえる」「買い物に行くときはいつも付き添いが必要」「まったく買い物はできない」)はすべて0点となります。

こうした点からも、IADLの評価においては高齢者の自立度が重視されることが伺えますね。

▼参考資料
・Lawtonの尺度におけるIADLの評価項目 国立研究開発法人 科学技術振興機構
https://www.jst.go.jp/s-innova/research/h22theme05/h22theme05_siryo01.pdf

老研式活動能力指標

駅の階段

また日本においてはIADLだけでなく、さらに高度な生活能力についても評価をおこなう老研式活動能力指標も医療や介護の現場で広く用いられています。この指標は13の項目で成り立っていますが、そのうち下記の5つがIADLについての質問となっています。

<手段的自立(手段的ADL=IADL)>
1.バスや電車を使って1人で外出できますか
2.日用品の買い物ができますか
3.自分で食事の用意ができますか
4.請求書の支払いができますか
5.銀行預金・郵便貯金の出し入れが自分でできますか

ちなみに厚生労働省が推進する「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」では、上記に「ゲートボール、踊りなど趣味を楽しんでいますか」という質問を加えた6つの項目でIADLを評価するとしています。

さらに老研式活動能力指標では、下記の項目についても評価をおこないます。

<知的能動性(知的ADL)>
6.年金などの書類が書けますか
7.新聞を読んでいますか
8.本や雑誌を読んでいますか
9.健康についての記事や番組に関心がありますか

<社会的役割(社会的ADL)>
10.友だちの家を訪ねることがありますか
11.家族や友だちの相談にのることがありますか
12.病人を見舞うことがありますか
13.若い人に自分から話しかけることがありますか

この指標では「はい」が1点、「いいえ」が0点の13点満点で生活の自立度を評価し、点数が高いほど自立度が高いと判定します。

▼参考資料
・老研式活動能力指標 千葉県医師会
http://www.chiba.med.or.jp/personnel/nursing/download/text2012_12.pdf

・健康日本21 総論参考資料(第3節にADLについての記述あり) 厚生労働省
http://www1.mhlw.go.jp/topics/kenko21_11/s1.html

QOLとADLの関係

上記のADLと並んで医療や介護の現場でよく使用される言葉にQOL(quality of life)があります。QOLは「生活の質」と訳されることもありますが、「どれぐらい人間らしく、満足がいく生活ができているか」「喜びや楽しみを感じて生活できているか」など、すこし大げさにいえばその人の人生の質をあらわす言葉でもあります。

通常、寝たきりのようにADLが低下した状態になると、QOLも低くなると考えられがちですが、たとえ寝たきりの状態であっても、適切なケアやサービスを受け、本人が日々の暮らしに喜びや楽しみを感じているならば、QOLは必ずしも低いとは限りません。ADLが高齢者の日常動作を「できる・できない」で判定し、身体的なケアの必要性や介助の量を計る指標だとすれば、QOLは精神面を重視し、心と体の両方のケアを考えるための尺度といえるでしょう。QOLはもともと医療の現場で使われていた言葉ですが、近年では介護の現場でも「QOLの向上」が大きな課題となっています。

ADLが低下したときには、精神面でのケアも大切

重ね合う手

通常、人は加齢とともにIADL→ADLの順でできないことが増えていきますが、高齢者においては、ADLが低下して「これまでできていたことができない」という状態になると、精神的なストレスなどから、QOLも低下してしまうというケースが多く見られます。

高齢者のADLが病気やケガ、加齢による衰えなどで低下し、介護が必要な状態になったときは、身体面の介助だけでなく、自尊心を傷つけないように介助をおこなうなど、精神面でのケアをおこなっていくことも大切といえるでしょう。

介護ぱど運営事務局