2017年11月15日

【廃用症候群】高齢者は要注意!入院などで安静状態が続くと寝たきりを招いてしまうことも…

入院する高齢者

高齢者が病気やケガなどで長期入院をした場合、急速に身体の機能が衰えたり、認知症の症状が進行してしまったりする廃用症候群を起こしてしまうことがあります。

廃用症候群はおもに体を動かさないことが原因で起こる心身の症状の総称ですが、高齢者の場合は回復が困難になることも多いため注意が必要です。

廃用症候群の症状とは

廃用症候群の代表的な症状は、筋力の衰えや関節の機能低下などによって体が動きにくくなることといえます。高齢者でなくても、足を骨折して長期間ギプスで固定していたような場合には、動かさなかったほうの足の筋肉が落ちてしまったり、関節がかたまってしまったりして、「歩きにくい」「足を動かしにくい」といった状態になることがあります。

しかし健康な若い人であれば、こうした症状はリハビリをおこなったり、日常生活のなかで自然に体を動かしたりしていくうちに改善するものです。ところが高齢者の場合は身体の機能が衰えるスピードが速く、回復に時間がかかるため、廃用症候群によって関節の動きや筋力の低下が進行してしまうと、リハビリをおこなっても元の状態に戻すのは困難といわれています。

また廃用症候群の症状は身体に関するものだけではありません。一日中ベッドに寝ているような安静状態が長期間続くと、「うつ」や「認知症の進行」といった精神面での症状を招いてしまう場合もあります。

下記は廃用症候群で起こるとされる症状の一覧です。

<肉体的な症状>
・筋肉がやせおとろえる
・関節の動きが悪くなる
・骨がもろくなる
・心臓や呼吸器の機能低下
・循環障害(血流が悪くなったり、血栓ができやすくなったりする。立ち上がり時のふらつきを招くことも)
・尿路結石・尿路感染
・褥瘡(じょくそう・床ずれ)

<精神的な症状>
・精神的な落ち込み、うつ状態
・見当識障害(現在の時間やいまいる場所などがわからなくなる)
・せん妄(意識の混乱による幻覚や妄想、幻聴など)
・睡眠障害

なお廃用症候群には生活不活発病という別名もありますが、この言葉は地震などの災害により避難所や仮設住宅での生活を余儀なくされた人が、環境の変化などによって体を動かさなくなり(=生活が不活発になる)、心身の機能が低下する症状を指す際におもに使用されています。また災害時の避難所での生活や車中泊においては、運動不足や水分補給の不足などからエコノミークラス症候群(※)を招く危険性も指摘されていますが、これなども廃用症候群のひとつといえるかもしれません。

※エコノミークラス症候群…長時間おなじ姿勢を取りつづけることや体内の水分不足などが原因となり、膝から下の部位に血栓(血のかたまり)ができる症状。この血栓が血流にのって肺の血管につまると、呼吸困難などの症状を引き起こし、突然死を招いてしまうこともある。

廃用症候群を予防するには

ウォーキング

廃用症候群を起こしている人の場合、病気やケガがなくても「いつも体がだるい」「疲れやすい」といった状態になることが多いようです。また廃用症候群でなかったとしても、高齢者においては、体力や意欲の低下から、「あまり外に出ない」「体を動かさない」というケースも多く見られます。しかし、こうした体のしんどさや疲れやすさ、意欲の低下などを理由として、本来は動ける人が動かないでいると、廃用症候群による心身の機能低下が急速に進んでしまい、要介護や寝たきりの状態を招いてしまう場合もあります。

こうした「動かない→廃用症候群が進行する→動けなくなる」という悪循環を防ぐためには、できる範囲でこまめに家事をおこなったり、すこしでも歩く習慣をつけたりするなど毎日の生活のなかでできるだけ体を使うことが大切です。また歩くことに困難が伴う人の場合でも、可能であれば杖や歩行器を使うなどして、できる範囲で歩く時間をつくることが廃用症候群の予防につながります。ただし、その際には転倒などの危険がないように、安全性に配慮することも必要となります。特に持病や身体の障害がある人の場合には、「どの程度なら動いてよいか」を医師に確認のうえ、無理のない範囲でできる活動をおこなうことが、廃用症候群を予防するうえでは大切といえるでしょう。

なお精神面での廃用症候群の予防策としては、自分が興味や関心を持てる趣味などを楽しむことや、地域での活動などに参加して「自分にも役割がある」という意識を持つこと、意欲を持って活動に取り組むことなどがあげられます。廃用症候群にならないためには、「人と会う」「軽い運動をする」など、日常生活において精神・肉体の両面に適度な刺激を与える活動をおこなうことが重要といえるでしょう。

廃用症候群からのリハビリは?

一方、廃用症候群のリハビリにおいても、体を動かすことはやはり重要です。

自宅でできる機能回復のためのリハビリとしては、家事や着替えなど自分でできることを、できるだけ自分でおこなうようにすることがあげられます。特に高齢者が病気やケガをした場合、治ったあとも周囲の人が何かと身の回りの世話をしてしまうようなケースが見られますが、手伝いや介助を最小限にとどめることが、入院などによる心身の機能低下を改善するために必要な場合もあります。

また歩くことも心身の機能回復にとってとても有効な運動となります。外出できる人は屋外での散歩やウォーキング、それが難しい人は室内での歩行や伝い歩きなど、身体の状態にあわせて歩く時間をつくることがポイントです。その際、転倒の危険がないように部屋を片付けておくことや、物や家具の配置を確認しておくこと、あるいは家の中の段差をなくしたり、手すりを取り付けたりといったリフォームをおこなうことで、本人が自力で移動しやすい環境を整えておくことも重要といえるでしょう。さらに病気やケガなどでベッドから動けないという人の場合は、手指の曲げ伸ばしなど、動かせる部位だけでも極力動かすようにすることが、廃用症候群の予防や回復につながります。

なお筋肉の萎縮や関節の拘縮などが進行している人においては、専門的なリハビリが必要な場合もあるため、体の部位に「動かしたくても動かせない」「一定以上動かせない」といった状態が見られるようなら、早い段階で医療機関を受診し、適切なリハビリを受けることが大切となります。これは、せん妄や見当識障害といった精神面の症状が見られる人の場合も同様です。

また入院などで人と接する機会が少なくなると、認知症など精神面の症状が進行してしまう可能性が高くなるため、病院にはこまめに面会に行き、人に会ったり話したりする時間をつくることも大切です。ちなみにデイサービスやデイケアといった通所介護においては、レクリエーションや運動による機能訓練やリハビリをおこないますが、こうした施設を利用することが、身体機能の回復だけでなく、コミュニケーション能力や認知機能の改善に有効となる場合もあります。

周囲の人が変化に気づくことも大切

高齢者が病気やケガなどで入院した場合、退院後はできるだけすみやかに日常生活に戻ったほうが廃用症候群を起こす可能性は低いといわれています。高齢者においては、入院後は体力が落ちていることなどから、自宅に戻ってもあまり体を動かさないというケースが多く見られますが、過度の安静状態はかえって廃用症候群を悪化させてしまいます。また、やむをえず長期の安静が必要という場合でも、治療と並行してリハビリをおこなっておくことが、廃用症候群を予防するうえでは重要となります。

なお廃用症候群は本人が気づかないうちに進行してしまうケースも多いため、周囲の人が「歩行の状態」や「外出の頻度」、「運動習慣」などについて日ごろからどのような状態なのかを把握しておき、特に入院後や病後、ケガからの回復時などは早い段階で変化に気づくようにすることも大切といえるでしょう。

▼参考資料
・廃用症候群 公益財団法人 長寿科学振興財団
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rounensei/haiyo-shokogun.html

・「生活不活発病」に注意しましょう 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10600000-Daijinkanboukouseikagakuka/0000122331.pdf

介護ぱど運営事務局