2017年11月22日

【介護サービスの料金は地域によって違う?】介護保険料や要介護認定率にも地域差

介護保険制度

公的な介護保険制度では、65歳以上で要介護や要支援の認定を受けた人に対して、1~2割の自己負担でさまざまな介護サービスを提供しています。

この介護サービスの料金は基本的には全国一律ですが、おなじ介護サービスを利用しても、居住する地域によって利用者が支払う額が異なる場合があります。ここでは地域によって介護サービスの料金が異なる理由や、介護保険料や要介護認定の地域差について解説していきます。

介護サービスの料金を決める「介護報酬の単位」とは

まず介護サービスの利用料に地域差が生じる理由ですが、これは介護報酬の単位の価格が地域によって異なるためです。介護報酬とは、施設や事業所が介護保険の適用される介護サービスを利用者に提供した際に、その対価として支払われる料金を指します。介護報酬=介護保険による介護サービスの利用料と考えるとわかりやすいかもしれません。

介護保険制度では、介護サービスを利用した高齢者は、この介護報酬の1割(一定以上の所得がある人は2割)を自己負担分として介護施設や介護事業所に対して支払いますが、残りの9割(または8割)の報酬については、介護サービスを提供する事業者が市町村に請求するシステムとなっています。ちなみに、このとき市町村から事業者に支払われる介護報酬は、介護保険料と国や地方公共団体(市町村や都道府県)の税によって賄われています。

介護報酬は介護サービスごとに設定されており、そのサービス費については国が支給限度額の基準を定めています。しかし、この基準額は「●●円」という金額ではなく単位で設定されており、基本は1単位=10円で計算されます。たとえば訪問介護における身体介護1(20分以上30分未満の身体介護)を利用した場合、介護報酬は245単位と定められているため、普通に計算するとその利用料は2450円であり、1割負担で利用者が支払うのは245円となります。

ところがこの介護報酬の単位には、地域やサービスの内容などによって上乗せがおこなわれる仕組みとなっているため、このとおりの金額にならないケースも多く見られます(介護報酬の単価やサービスの基準額は2017年10月現在のもの)。

なぜ地域によって差があるの?

考える女性

それでは、なぜ介護報酬の単位は、「1単位=10円」の全国一律ではないのでしょうか?

政府は、介護報酬の単位に地域やサービスによる上乗せをおこなうおもな理由として、介護職に従事する人の賃金に地域差があることをあげています。たとえば東京23区などの人口の多い地域は、人口の少ない地域と比べて人件費も高額になるのが一般的ですが、介護保険による介護サービスを提供する施設や事業所は介護報酬によってこうした人件費を賄っているため、人件費が高い地域ほど1単位あたりの金額を上乗せする調整が必要になるのです。ちなみに上乗せの割合については、もっとも高い地域から順に1級地(東京23区)~7級地に区分され、上乗せが0%(1単位=10円)の地域については「その他」と分類されています。

さらにこの上乗せの割合は、介護サービスに占める人件費の割合によっても変わります。現行の介護保険制度では、人件費による上乗せの割合を70%・55%・45%の3種類に定めており、たとえば訪問介護や訪問入浴介護は人件費割合70%、訪問リハビリや通所リハビリは人件費割合55%、デイサービスやデイケアなどの通所介護は人件費割合45%と規定しています。上記の地域区分で「その他」と区分された地域は人件費を理由とする上乗せがおこなわれないため、どのような介護サービスにおいても介護報酬の単位あたりの価格は変わりませんが、それ以外の地域では、介護報酬の1単位あたりの価格は国が定めた地域区分と介護サービスに占める人件費の割合によって決定されます。

なお、現在では多くの施設や事業所において、こうした地域区分や人件費割合による上乗せ以外にも、介護職員の給与に反映するための介護職員処遇改善加算を介護報酬にプラスしているケースも多く見られますまた、お住まいの地域の区分や地域ごとの介護報酬の単価、介護サービスの人件費割合の詳細については、下記の資料をご覧ください。

▼参考資料
・地域区分について 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000143081.pdf

介護保険料では3倍以上の地域差も

介護保険による介護サービスの利用料については、地域区分などによる上乗せがあるものの、国が基準額を定めているため、いまのところ地域差はそれほど大きくありません。しかし、65歳以上の高齢者が支払う介護保険料については、その金額に大きな地域差が生じていることが問題となっています。

朝日新聞デジタルが作成している全国の介護保険料マップによると、65歳以上の第1号被保険者が支払う介護保険料の基準額(2015年度~2017年度分)が、もっとも安い鹿児島県三島村では2800円なのに対し、もっとも高額な奈良県天川村では8686円と、地域によって3.1倍もの格差が生じているとのこと。

なぜ介護保険料にこのような地域差が生まれるのでしょうか?

そもそも介護保険料には65歳以上の人が支払う第1号保険料と、40歳から64歳までの人が健康保険料と一緒に支払う第2号保険料があります。このうち第1号保険料の基準額は、大まかにいうと地域で使われる介護サービス費を予測して、その合計額を地域に居住する65歳以上の高齢者で頭割りにする形で計算されます。そのため介護サービスの利用が多い地域ほど、65歳以上の人が支払う介護保険料も高額になる傾向があるのです。ちなみに、実際に65歳以上の人が月々支払う介護保険料は、この基準額をもとに個々の所得や課税状況を考慮したうえで算出されたものとなります。

▼参考資料
・比べてみよう わがまちの介護保険料
http://www.asahi.com/national/eldercare/kaigohoken_map/

要介護の認定率にも地域差

グラフ

また、介護に関する地域差が問題となっているのは保険料だけではありません。2016年4月には、要介護認定率についても都道府県別で最大1.6倍の地域差が生じていることが新聞各紙などで報じられています。

要介護認定率とは65歳以上の高齢者における要介護認定を受けた人の割合を示す言葉ですが、厚生労働省の調査によると、要介護認定率がもっとも高かった地域は大阪府で22.4%、逆にもっとも低かったのは山梨県の14.2%とのことで、両地域には約1.6倍の地域差が生じていることが判明したそうです。

なお同調査では要介護の認定率が高い地域ほど、高齢者1人あたりの介護費用も高額になる傾向があることも報告されており、65歳以上の高齢者が利用する年間の介護費用がもっとも高い地域である大阪府(31万9千円)ともっとも低い地域である栃木県(24万5千円)では約1.3倍の地域差があることも明らかになっています。厚労省はこうした地域差が生まれる要因については「はっきりとは分からない」とコメントしていますが、要介護認定率の地域差については「あるべきでない」という指摘もあり、厚生労働省の介護保険部会では地域差の是正に向けた具体策が検討されているとのことです。

▼参考資料
・要介護率の地域差1.6倍 大阪で最大、22.4% 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG05HAL_V00C16A4CR8000/

・介護費の地域差分析について 厚生労働省
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/shakaihoshoukaikaku/chousakai_dai7/siryou4.pdf

・「あるべきでない地域差」是正に向け、市町村へのインセンティブ付与などを検討―介護保険部会 メディ・ウォッチ
http://www.medwatch.jp/?p=8620

地域による取り組みが大きな課題に

近年、国内においては急速に高齢化が進行しており、それに伴い介護を必要とする高齢者が増えつづけている状況があります。2017年6月には、介護サービス費から利用者の自己負担分を引いた介護給付費が、2015年度に9兆円を突破していたことも報じられましたが、いまや増加する介護費用を抑制することは、国だけでなく地方自治体にとっても大きな課題となっています。

こうした状況を踏まえ、東京都荒川区では区が主導して介護予防体操の教室を開催することで同区における介護給付費を抑制し、介護保険料を引き下げるのに成功したとのこと。今後はこうした取り組みをおこなう自治体と、そうでない自治体のあいだで、要介護認定率や介護保険料にますます差が出てきてしまう可能性もあります。

もちろん、行き過ぎた抑制策により、介護を必要とする人に適切な介護が提供されなくなるような事態は避けなければなりませんが、介護給付費の上昇が利用者自身の負担増にもつながる以上、自治体によるこうした介護予防の取り組みは、地域で高齢者が健やかに暮らしていくうえで欠かせないものといえそうですね。

▼参考資料
・介護給付費9兆円突破 15年度、伸びは鈍化 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20170621/k00/00m/040/087000c

・介護予防で保険料低く 自治体が対策、地域差3倍 日本経済新聞
https://style.nikkei.com/article/DGXKZO91019980X20C15A8NZBP01?channel=DF130120166126&style=1

介護ぱど運営事務局