2017年11月29日

「介護保険によるリハビリ」と「医療保険によるリハビリ」、その内容や目的の違いとは?

車いす

高齢者に対する介護や医療の現場で重要とされるリハビリテーション

リハビリと略されることも多いこのリハビリテーションですが、この言葉には「なんらかの理由で低下した機能や能力を改善するように働きかける」という意味合いがあります。医療機関や介護施設でおこなわれるリハビリとしては、病気やケガによって動きが鈍くなった筋肉や関節に働きかける機能訓練がもっとも一般的といえるかもしれません。

その一方で、病院などの医療機関でおこなわれるリハビリと、介護施設でおこなわれるリハビリとでは、適用される保険やリハビリの目的、リハビリを受けられる期間などに違いがあるため、それぞれのリハビリについて理解しておくことが必要となります。

医療保険と介護保険、それぞれのリハビリ

まず、保険の種類によってリハビリは下記の2種類に分けられます。

<医療保険によるリハビリ>

医療保険によるリハビリは、病院などの医療機関に通院または入院しておこなわれますが、その目的はおもに病気やケガによって損なわれた心身の機能・能力の回復や日常生活への復帰とされています。通常、こうしたリハビリをおこなう医療機関には理学療法士作業療法士言語聴覚士といったリハビリの専門職員が在駐しており、医師による治療とあわせて、病気やケガの状態に応じた機能訓練などの多様なリハビリが受けられる点が、医療機関におけるリハビリの大きな特徴といえるでしょう。

ただし、医療保険によるリハビリには充実した機能訓練や治療が受けられるというメリットがある一方で、リハビリが受けられる期間に限りがあり、長期にわたってリハビリをおこなうことが難しいという面もあります。

<介護保険によるリハビリ>

介護保険制度においては、要介護要支援の認定を受けることにより、少ない自己負担(1割または2割)で、さまざまなリハビリのサービスを利用することができます。医療保険によるリハビリとは違い、介護保険によるリハビリは期間に限りがなく、長期にわたってリハビリをおこなうことが可能となっています。そのため、医療機関でのリハビリを終えた人が、介護施設でのリハビリに切り替えて機能訓練などを継続するというケースも多く見られます。

介護保険によるリハビリには、施設に通っておこなう通所リハビリや、自宅でおこなう訪問リハビリなどがありますが、老人ホームのような入居型施設においても、入居者の心身の機能や身体能力を維持することを目的とした機能訓練や運動、レクリエーションといったリハビリのプログラムが広く実施されています。なお介護施設は、制度上の理由などから医療機関と比べてリハビリの専門職員の配置が少ないケースが多いため、介護福祉士や看護士といった一般の介護職員が機能訓練や運動指導を担当することも多いようです。

介護保険によるリハビリの種類

リハビリを行う高齢者

ちなみに、介護保険によるリハビリは下記の3種類に大きく分けられます。

1.施設に通っておこなうリハビリ

利用者が自宅や老人ホームなどから施設に通っておこなうリハビリには、デイケア(通所リハビリ・要支援の人は介護予防通所リハビリ)デイサービス(通所介護・要支援の人は介護予防通所介護)の2種類があります。デイケアとデイサービスはかなり似通った介護サービスであり、どちらも利用者が施設に一定の時間滞在して機能訓練などのリハビリや食事、入浴といったサービスを受ける点は共通しています。

しかし、デイケアがおもに機能回復のためのリハビリに重点を置いているのに対し、デイサービスでは日常生活の支援や、施設での他者との交流を通した楽しみづくり・生きがいづくりを重視するなど、それぞれの施設の目的は異なったものとなっています。なおデイケア、デイサービスのいずれの施設も、通常は自宅や老人ホームからリハビリをおこなう施設のあいだで車による送り迎えがおこなわれます。

2.自宅でおこなうリハビリ

外出や通院が困難な人の場合、要介護や要支援の認定を受けていれば訪問リハビリテーション(要支援の人は介護予防訪問リハビリテーション)のサービスを利用することができます。

訪問リハビリでは、ケアマネジャー(介護支援専門員)などが作成するケアプランに基づき、理学療法士や作業療法士といったリハビリの専門職員が利用者の自宅を訪問して、歩行練習や日常生活動作の訓練、身体機能の維持・回復のためのトレーニングなどのリハビリをおこないます。なお訪問リハビリは医師の指示に基づいておこなわれるため、リハビリを受ける際には医師による指示書が必要となります。

ほかにも、自宅でおこなうリハビリには訪問看護によるリハビリテーション(要支援の人は介護予防訪問看護によるリハビリテーション)があります。これは介護保険による訪問看護の一環としておこなわれるリハビリであり、訪問看護ステーションなどから派遣される看護師や理学療法士が利用者の心身の状態をチェックし、その状態に即したリハビリをおこないます。なお訪問看護によるリハビリには、介護保険ではなく医療保険が適用される場合もあります。

3.一定期間、施設に入所しておこなうリハビリ

高齢者が入所してリハビリをおこなうことに重点を置いた施設に、介護老人保健施設(老健)があります。老健は、病院と自宅を結ぶ中間に位置づけられる施設であり、たとえば病気やケガで入院した際、退院後すぐに自宅に戻って生活するのが不安な場合などに、要介護の認定を受けた人であれば、老健に一定の期間入所してリハビリを受けることができます。また老健には医師や看護師のほか、理学療法士や作業療法士といったリハビリの専門職員の配置が義務づけられているため、医師の監修のもとで専門的なリハビリが受けられるというメリットもあります。

ただし、老健はあくまで短期間の入所による機能回復を目的とした施設であるため、3ヶ月に1度おこなわれる検討会議によって「機能が十分に回復した」と判定された場合には退所しなければなりません。なお老健では、通所による利用(デイケア)や30日以内の短期入所(ショートステイ)による利用もおこなっていますが、老健を利用できるのは要介護の認定を受けた人のみであり、基本的に要支援の人は利用不可となっています。

高齢者にとっては、日常生活のすべてがリハビリに

話をする高齢者女性

これまで述べたように、医療機関でのリハビリがおもに病気やケガによる機能障害からの回復を目的としているのに対し、介護施設におけるリハビリでは現在の心身の機能や能力を維持し、衰えを防ぐことにも重点を置いているのが大きな特徴となっています。たとえば高齢者が病気やケガなどで長期間の入院をした場合、身体の機能や能力を回復させるためのリハビリだけでなく、人と会ったり、話をしたり、話を聞いて理解したりといった、コミュニケーション能力や社会への適応力についてのリハビリが必要となる場合もあります。高齢者の入院時における家族や友人の面会は、こうしたリハビリとしても有効であり、認知症を予防したり認知機能を維持・回復したりする上でも重要といえます。

一方、デイケアやデイサービスといった通所リハビリでは、身体面の機能訓練とともに、介助や見守りを受けながら食事や入浴をしたり、レクリエーションなどを通して他者とコミュニケーションをしたりといったプログラムがおこなわれていますが、こうした行為のひとつひとつが高齢者にとってはリハビリとしての意味合いを持つものということができます。特に一人暮らしの高齢者においては、外出したり人と接したりする機会が少なくなってしまうことも多いため、デイケアやデイサービスに通い、他者と触れ合う機会をつくることが、心身の機能や能力を維持・回復する上で必要となる場合もあります。

家族や友人とコミュニケーションをしたり、できる範囲の家事を自分でおこなったり、外出して趣味や地域の活動に参加したりすることは、上記の通所型施設の例と同じく、高齢者にとってそれ自体が心身の機能や能力を維持・回復するための重要なリハビリとなっているケースが多く見られます。そのため家族や周囲の人においては、高齢者にとっては日常生活における動作のすべてが介護予防(介護が必要な状態になるのを防ぐ)であり、リハビリであるということを理解した上で、適切な見守りや介助をおこなっていくことが、高齢者の心身の健康維持には重要といえるでしょう。

▼参考資料
・リハビリテーションとはなにか? 御所南リハビリテーションクリニック
https://goshominami-clinic.jp/knowledge/what-rehabilitation.html

・医療保険のリハビリ、介護保険のリハビリの違いは? 春日リハビリテーション病院
http://www.kasuga-rehabili.com/rehabilitation/01.php?log_no=9

・訪問リハビリテーション 独立行政法人 福祉医療機構
http://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/kaigo/handbook/service/c078-p02-02-Kaigo-04.html

介護ぱど運営事務局