2017年12月13日

理学療法士(PT)がおこなうリハビリとは?『動作のプロ』は老人ホームでも活躍

リハビリルーム

医療機関や介護施設でリハビリテーションをおこなう専門職として知られる理学療法士

理学療法士はPT(Physical Therapistの略)とも呼ばれ、おもに病気やケガによって損なわれた身体機能や運動能力の回復を担当します。ここでは、理学療法士の仕事の内容や老人ホームなどの介護施設での役割について解説していきます。

理学療法士は「動作」の専門家

理学療法士は、ひとことで言うとリハビリのうちで「動作」を担当する専門家です。たとえば、足を骨折して歩くことができない状態になったときに、「立つ」「座る」「歩く」といった動作を元通りスムーズにおこなえるようにサポートしてくれるのが理学療法士です。

また高齢者においては病気やケガだけでなく、加齢による筋力や関節機能の衰えなどが原因となり、座る・立つ・歩く・寝返りをうつ、といった日常動作をおこなうことが難しくなるケースも多く見られます。そうした場合、医療機関や介護老人保健施設(老健)などで、高齢者に対してこうした動作の訓練をおこない、その人に合った日常生活に復帰できるようにサポートするのも理学療法士のおもな仕事です。

なお理学療法士は国家資格であり、理学療法士としてリハビリをおこなうには、国家試験を受験して厚生労働大臣の免許を受けることが必要となります。

理学療法士の仕事

理学療法士はおもに下記のような病気やケガなどからの回復を目的としたリハビリに対応しています。

・脳血管疾患(脳梗塞、脳出血など)
・運動器疾患(骨折、変形性関節症など)
・呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患など)
・脊髄の損傷
・心疾患(心不全、狭心症など)
・加齢に伴う機能低下

また高齢者の場合は長期間の入院や安静状態が心身の機能や運動能力の低下につながりやすいため、病気やケガが治ったあとは、できるだけすみやかに日常生活に復帰することが重要とされていますが、理学療法士がおこなう専門的なリハビリは、高齢者が入院生活や療養生活から安全かつスムーズに日常生活に復帰するために欠かせないものといえるでしょう。

なお理学療法士がおこなうリハビリとしては下記のような療法があげられます。

・運動療法…関節を動かす訓練(関節可動域訓練)、基本動作訓練(立つ・座る・歩く・起き上がる・寝返りをうつといった日常生活の基本動作の訓練、あるいは車いすや杖、歩行器などを使用する訓練など)、ストレッチ、筋力トレーニング、心肺機能を含む持久性の改善運動など。

・物理療法…マッサージ、温熱療法、寒冷療法、牽引療法、電気刺激や超音波、レーザーによる療法など。

さらに医療機関や施設によっては、理学療法士が日常生活に必要な動作をトレーニングするための日常生活活動訓練(ADL訓練)に関わる場合もあります。このADL訓練には、ベッドからの起き上がりや移動といった理学療法士がおこなう運動療法も含まれますが、食事や排泄の動作訓練においては理学療法士の専門分野を超えたトレーニングもおこなわれます。そのためADL訓練では、作業療法士言語聴覚士といった異なる技能や知識を持つ専門職が、理学療法士と連携してリハビリにあたるケースも多いようです。

理学療法士の就労場所は

理学療法士はおもに病院やクリニックなどの医療機関でリハビリに携わっていますが、介護関連では介護老人保健施設(老健)が主要な就労場所といえます。老健は要介護認定を受けた高齢者がリハビリを受けながら日常生活への復帰を目指す場所であり、老健がおこなう通所リハビリ(デイケア)や短期入所(ショートステイ)においても理学療法士は欠かせない存在となっています。さらに介護保険によるサービスでは、訪問看護の一環としてリハビリテーションがおこなわれる場合もあり、訪問看護ステーションから理学療法士が派遣されることもあります。

また特別養護老人ホーム、有料老人ホームといった入居型の施設のなかには、入居者の身体機能や運動能力の維持などを目的とした理学療法士による機能訓練をおこなう施設も見られます。ほかにも、心身の発達に遅れや障害を持つ子どものための療育園・療育センターや特別支援学校、障害者福祉センターといった福祉関連の施設や学校においても、理学療法士は対象者の状態にあわせたリハビリをおこなっています。

介護施設におけるリハビリとは

リハビリ

上記のように理学療法士が配置されている医療機関や介護施設にはさまざまなものがありますが、それぞれの施設でおこなわれるリハビリは、その目的に違いがあります。たとえば医療機関におけるリハビリは、おもに病気やケガで損なわれた身体機能・運動能力の回復に重点を置いていますが、介護施設におけるリハビリはそれぞれ下記のような目的のもとでおこなわれています。

・介護老人保険施設(老健)…日常生活への復帰を目的として、自宅や次の入居施設において、できるだけ安全で自立した質の高い生活をおくれるようにリハビリをおこなう。

・通所リハビリ(デイケア)…リハビリで身体機能や運動能力などの維持・改善をおこなうことによって、在宅生活を長く継続できるようにサポートする。

・訪問リハビリテーション…外出や通院が難しい人に対して、身体機能や運動能力の維持・改善のためのリハビリをおこなう。

さらに老人ホーム(特別養護老人ホーム、有料老人ホーム)でおこなわれる理学療法士による機能訓練は、病気やケガによる障害からの回復だけでなく、心身の機能や運動能力を維持し、入居者のQOL(生活の質)を高める意味合いが強いものとなっています。また医療機関におけるリハビリや訪問リハビリが医師の指示のもとでおこなわれるのに対して、老人ホームでのリハビリは、理学療法士が個々の利用者の状態を把握しながら進めていくことが多いのも特徴といえるでしょう。

リハビリの内容についても、医療機関や老健でのリハビリが個別の病気やケガにあわせた専門的な内容となっているのに対して、老人ホームでのリハビリは、ストレッチや筋力トレーニング、マッサージといった多くの人がおこなうことができる内容のものを、施設での日常生活のプログラムに組み込んでいるケースが多いようです。

理学療法士によるリハビリを受けるには

要介護や要支援の認定を受けている人であれば、介護老人保健施設(老健)や通所リハビリ(デイケア)、訪問リハビリなどで、理学療法士によるリハビリを受けることができます。また、こうした認定を受けていない人の場合は、リハビリテーション科理学療法科のある病院やクリニックを受診して、リハビリを受けることになります。

ちなみに介護保険によるリハビリは原則として無期限ですが、医療機関でのリハビリは受けられる期間に限りがあるため、日常的なリハビリを必要とする高齢者の場合は、医療機関でのリハビリから介護施設でのリハビリや訪問リハビリに移行するケースも多く見られます。そのため、高齢者が病気やケガなどでリハビリが必要な状態になった場合には、要介護(要支援)認定の申請をすみやかにおこない、医療機関でのリハビリが終了したあとも、介護保険でリハビリが継続できるようにしておくことが大切といえるでしょう。

介護現場における理学療法士の役割とは

日本で理学療法士の国家試験がスタートしたのは1966年のことですが、厚生労働省の資料によれば、2002年の段階で3万4258人だった国内における理学療法士の数は、2014年には10万4928人にまで増え、その後も年間約1万人ずつ増加しているとのことです。このように有資格者が増えていることから、現在では「供給過多」の声も聞かれる理学療法士ですが、高齢化が進行する現在の社会において、理学療法士は依然として需要の高い専門職といえます。

また厚生労働省が整備を進める地域包括ケアシステム(※)においては、要介護状態になるのを遅らせたり、要介護状態の進行を防いだりするための介護予防に重点が置かれていますが、同様に老人ホームなどの入居型施設においても、入居者の心身の機能や運動能力を維持していくことが大きな課題となっています。

こうした介護予防や老人ホームにおけるリハビリでは、理学療法士は身体機能や運動能力の維持・回復をサポートするのはもちろんのこと、対象者の状態や日々の変化をチェックし、高齢者たちが目的意識ややりがいを持ってリハビリに臨むことができるようにリードすることも必要となります。

国内ではさらなる高齢化の進展が予測されていることから、理学療法士が老人ホームでのリハビリや訪問リハビリといった介護の現場に携わる機会も今後ますます増えていくことと思われますが、こうした現場においては理学療法士がリハビリだけでなく、介助など日常生活全般の支援に関わることを求められるケースも多く見られます。高齢者の介護においては、看護師や介護福祉士、あるいは作業療法士や言語聴覚士といったさまざまな専門家と連携しながら、入居者や利用者のQOL(生活の質)を高めていくことも、理学療法士の大きな役割といえるかもしれませんね。

※地域包括ケアシステム…高齢者が重度な要介護状態になっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けられることを目指し、政府が2025年を目途に構築を進める医療・介護・予防・住まい・生活支援を一体的に提供するシステム。

▼参考資料
・理学療法士とは 公益社団法人 日本理学療法士協会
http://www.japanpt.or.jp/general/aim/physicaltherapist/

・理学療法士を取り巻く状況について 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000122672.pdf

・運動療法 公益財団法人 長寿科学振興財団
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rehabilitation/undou-ryouhou.html

・理学療法士50年の歴史 公益社団法人 日本理学療法士協会
http://50th.japanpt.or.jp/history/

・医師・看護職員・理学療法士・ 作業療法士の従業者数について 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000106658.pdf

介護ぱど運営事務局