2018年03月08日

認知症の早期発見・早期治療~そのメリットとは?受診を拒否する場合は?

四つ葉のクローバー

高齢化がますます進む日本において、話題にあがることの多い病気のひとつに「認知症」があります。2年後の2020年には約600万人、その10年後2030年には約744万人、文字通り右肩上がりに認知症患者が増えると予測されています。家族や自分自身がなる可能性も大きいことから、「認知症」は現代に生きる誰にとっても他人事ではありません。

「認知症」という病に対する不安

「自分や家族が認知症になってしまったら…」というのは誰しもが感じる不安です。認知症に対して「なんとなく」のイメージだけで不安や怖れを抱いている人も多いと思います。たとえば、「認知症になったら何もわからなくなってしまうのではないか」「家族やまわりに迷惑をかけるような行為をするようになってしまうのではないか」といった不安です。医療現場や介護現場のなかには認知症に対する専門的な知識を持っている人も多くいますが、日常的に認知症の人に関わる機会がなければ知識がないのは当たり前。さらにニュースなどで流れる認知症の情報は、過酷な介護や誤って起こした事故などマイナス的な内容が多いのが現実なので、どうしても悪いイメージぱかりを抱くことになってしまいます。

「もしも自分や家族が認知症になってしまったら、どうなってしまうのだろう」

「仕事はできるのだろうか、今までのような生活は送れなくなってしまうの?」

次々と湧き上がる不安に、何もせず怯えていてもどうにもなりません。認知症になっても、安心して毎日を過ごしていきたいと思う気持ちは多くの人が考える共通の思いです。その思いを少しでも長く可能にするためにはどうすればいいのかを考えて、今から備えておくことが大切です。ここからは「認知症になっても、自分らしく生きるために」、今からどのような備えができるのか見ていきたいと思います。

認知症は早期発見が大切

看護師

認知症は一度なってしまうと、現段階では完全に治癒させることが難しい病です。しかし、早期発見により症状の進行を遅らせることはできます。実際に、初期の段階で自分が認知症であると診断を受けた人や専門家の先生に話を聞いたところ、早期発見の良いところとして次のような点を挙げてくれました。

・薬等で進行を遅らせることができ、健康な時間を長く生きることができる
・認知症について理解できる段階で受診することで、病気に対する理解を深めることができ、それが後々のトラブルを軽減させることにもつながる
・今後どのように生きていきたいかを自分で決めることができる

2つ目については、認知症の当事者本人だけの問題としてではなく、家族や地域の人たちへの理解を広めていくことでもあります。「今後、○○で迷惑をかけてしまうかもしれない」と認知症であることと同時にその症状について説明しておくことで、周囲の人たちにとっては気持ちの準備期間にもなります。また、具体的なサポートの方法について事前に考えておく機会にもなり、必要に応じて地域の人からも良い協力を得られる環境を作りやすいのではないでしょうか。

3つ目の「今後どのように生きていきたいかを自分で決めることができる」というのは、具体的な治療の方針や住居の選択などの決定のことをいいます。たとえば一人暮らしをしていた場合、診断後もそのまま自分一人で生活を続けたいのか、家族と同居して暮らしたいのかを決めなければなりません。一人暮らしを続ける場合は、家族がどのようなサポートをするか、どう分担していくかという話し合いが大切になりますし、家族との同居、あるいは施設等へ入居を希望する場合にはそのための準備が必要になります。

こんな症状が気になったら専門医への受診を

認知症の初期症状は「どこかいつもと違うな」「少し変じゃない?」というところから始まります。自分で気が付くこともありますし、家族など周りの人が気が付く場合もあります。一般的な症状としては、次のようなものがあります。

・同じことを何度も話したり、聞いたりしてくる
・忘れ物や探し物が多くなる
・約束の日時や場所を間違える
・落ち着きがなくなり、怒りっぽくなる
・単純な仕事や計算に時間がかかる
・興味関心が失われたり、身だしなみに気を配らなくなる

買ったことを忘れて同じものを何回も買ってしまい、ショックを受ける…というような場面を、認知症を扱ったドラマで見たことのある人も多いのではないでしょうか。このなかで一番気が付きやすい初期症状は「記憶障害」にあたる上の3つの症状です。これらの症状が目立つようになると本人も周囲の家族も「何かおかしいな」と気が付くケースが多いといいます。ほかにも、今まで普通にできていた料理や仕事などで失敗が続くようなことがでてきたり、性格が変わったなと思うようなことがあったら要注意かもしれません。

「病院への受診」、嫌がる場合は…

悩む女性

認知症の初期症状が出ていることに家族が気が付いて、本人に病院へ行くことをすすめても受診を嫌がられてしまう、そういったケースをよく耳にします。受診を嫌がる理由は人によって異なりますが、そこには「自分はボケてなんかいない」「今の生活を壊したくない」「みんな(家族)からバカにされたくない」というさまざまな思いが心の奥底にあるのだと思います。認知症に対する「怖れ」「不安」を抱いている人を受診へ導くのは大変なことです。無理にすすめようとすると家族に対して敵意をむき出しにしてくる場合もあるからです。

それでは、どのようにして受診へつなげていけば良いのでしょうか。これも人の性格や周りの環境はそれぞれ違うので、「これが正解」という答えはありません。ここでは、実際に行われた2つの方法を挙げてみたいと思います。

【ケース1】
本人の身体のために、「健康診断を受けてみよう」と話をして受診をするように促す。そこで問診の際に、「物忘れがあって不安になることはないか」といったことを医師から直接聞き出してもらうようにする。

【ケース2】
本人に、認知症の症状が少し出ているようで心配だから、一度受診をするように話をする。本人の不安な気持ちが少しでも安定するように、もし認知症であった場合でも「早期に診断し治療を開始することで進行を遅らせることができる」といった利点もしっかりと説明しておく。

ケース1の方法は、悪く言えば「騙して受診させる」と捉えられますが、受診を嫌がる本人に医師と話をしてもらう機会を作るためには、必要なことではないかと思います。他の病気も健康診断がきっかけで見つかるケースは多いですし、認知症もそれがきっかけで早期発見できたとなれば自然な流れです。

ケース2の場合は、本人としっかり話し合いをして納得してもらうことが必要です。本人の自覚度合や性格、家族との関係などでなかなか難しいのが現実ですが、誰しもこうありたいと思うような最善のケースといえます。本人が納得できるようであれば、もし認知症であると診断を受けても、今後の生活に希望が持てるようにポジティブな話をしておくのが良いと思います。家族ができる限りのサポートをするという話も本人の不安を和らげてくれるかもしれませんね。

認知症はどこで診てもらえばいい?

認知症の診断を受けるには、病院の何科で診てもらえばいいのでしょうか。現在は、「もの忘れ外来」など認知症を専門に診てくれるところも増えてきていますが、自宅の近所にない場合にはまずいつものかかりつけ医に相談するのが良いといわれています。受診の際には、日常的に困っていることを箇条書きにメモにして医師に説明できるようにしておくと良いでしょう。

最初から認知症専門医の診断を受けたいと思われる人は、日本老年精神医学会と日本認知症学会のサイトから検索することができます。また、厚生労働省が各地域に認知症診療の中核施設として設置した「認知症疾患医療センター」に相談してみるのも良いでしょう。ここでは認知症専門医のほか、精神保健福祉士などの専門の相談員による医療相談も行われています。

・公益社団法人日本老年精神医学会
http://www.rounen.org/

・日本認知症学会
http://dementia.umin.jp/

・全国の認知症疾患医療センター
http://www.ninchi-k.com/?page_id=34

一度しかない人生ですから、認知症になったからといって自分らしく生きることを諦めたくはありませんよね。診断を受けたからといって、認知症であることを受け入れるのは簡単ではありませんが、周りがサポートをしながら「認知症とともに自分らしく、新たな生き方を」全うできる環境を作っていけたら良いですね。

介護ぱど運営事務局