2018年03月06日

【2018年4月の介護報酬改定】自立支援や医療との連携が焦点に

カルテを持つ女性

2018年1月、厚生労働省が同年4月に予定している介護報酬改定の内容をまとめたことが報じられました。

介護保険による介護サービスの公定価格である介護報酬の改定は、介護事業者だけでなく、介護サービスを利用する人にも大きな影響を与える可能性があります。なお介護報酬は原則として3年ごとに見直しがおこなわれますが、今回は2年に1度おこなわれる診療報酬(医療保険による診療行為をおこなった際に医療機関が受け取る報酬)とのダブル改定となります。

介護報酬の改定が利用者に与える影響は?

国が取り決めた介護サービスの利用料ともいえる介護報酬の改定は、介護施設や介護事業所の運営に大きく影響します。また事業所や施設の経営状態は、そこで提供されるサービスの質や内容にも直接関わってくることから、介護報酬の改定が利用者に与える影響も決して少なくありません。極端な話、介護報酬の引き下げによって経営状態が悪化した施設が倒産したら、利用者は新たな施設を探さなければならないのです。

実際に、総額で2.27%の介護報酬の引き下げがおこなわれた2015年度の介護報酬改定時には、マイナス改定の影響により介護事業者の倒産が過去最多を更新したことも報告されています。2018年度の改定では、政府は全体で介護報酬を0.54%引き上げるプラス改定を打ち出していますが、介護報酬の引き上げは介護サービス利用料の値上げにつながるため、利用者の負担増を招いてしまう可能性があるのが難しいところです。

「自立支援・重度化防止」と「医療との連携」がポイントに

介護士と高齢者

通常、介護報酬の改定で見直しや変更がおこなわれる項目は多岐にわたりますが、今回の改定では特に下記の2点に重点が置かれています。

1.自立支援や重度化防止への取り組みの評価

現在、国内においては団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年を見据えた介護人材・介護施設の不足への対策、膨らみ続ける医療・介護費用の抑制などが喫緊の課題となっています。

第一次ベビーブーム世代ともいわれる団塊の世代が総人口に占める割合は多く、2015年には厚生労働省が2025年には介護人材が37万7千人不足するという推計を発表しているほどです。こうした背景もあり、今回の介護報酬改定では、高齢者の自立を支援し、要介護状態の重度化を防止するサービスへの評価制度が複数新設されています。

そのうちのひとつが、通所介護(デイサービス)への心身機能の維持に係るアウトカム評価の導入です。これはデイサービスのうち、ADL(※)が維持・改善される利用者が多い施設に対して、インセンティブ(成功報酬)として加算を付与するというこれまでになかった制度です。また、老人ホームなどの施設系サービスにおいては、自力での排泄を促す「おむつ外し」などの取り組みを実施している施設を評価する排せつ支援加算も新設されています。ほかにも訪問リハビリや通所リハビリにおいては、医師の詳細な指示に基づくリハビリを提供する施設・事業所をより手厚く評価する改定もおこなわれる予定となっています。

※ADL…日常生活動作。日常生活をおくるのに必要とされる食事や排泄、入浴、着替えなどの基本的な動作のこと。介護の現場では、こうした動作をおこなう能力を指してADLという場合も多い。

2.医療、介護の連携に対する評価

後期高齢者の増加に伴い、国内では介護を必要とする人だけでなく、さまざまな持病を抱える高齢者が増えることも予測されています。こうした現状を踏まえ、今回の改定には医療・介護の連携を強化している施設や事業所を手厚く評価する加算も盛り込まれました。

たとえば、介護付き有料老人ホームなどの特定施設入居者生活介護(※)においては、たんの吸引などの医療的ケアの提供を評価する入居継続支援加算などが新設されています。また、特別養護老人ホーム(特養)においては、複数の医師を配置している施設において、配置されている医師による早朝や夜間、深夜の施設での診療を評価する配置医師緊急時対応加算が実施される予定です。さらに認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者グループホーム)に関しては、医療機関との連携を確保しつつ、手厚い看護体制をおこなっている施設を評価するための新たな区分が設けられることになっています。

※特定施設入居者生活介護…介護付き有料老人ホームや、サービス付き高齢者向け住宅などが、介護保険の指定を受けた上で提供する食事や入浴、機能訓練などのサービス。

福祉用具のレンタル価格やデイサービスの利用時間に関する改定も

また、上記以外で利用者への直接の影響が予測される改定としては、下記の2点があげられます。

・福祉用具レンタルの上限額の設定

介護保険では、車いすや介護ベッドなどの福祉用具を、要介護度に応じて1割(一定以上の所得がある人は2割)の自己負担でレンタルすることができます。

しかし、このレンタル価格については事業者が自由に設定できることから、全国平均価格が8800円の介護ベッドが、10万円でレンタルされている事例が報告されるなど、地域や事業者による価格差が生じていることが問題となっていました。こうした状況を踏まえ、今回の改定には、2018年10月から福祉用具のレンタル料金の全国平均価格を公表することや、レンタル価格の上限を設定することなどが盛り込まれました。

・通所介護の時間区分の見直し

今回の改定では、これまで2時間ごとの区分となっていた通所介護(デイサービス)の利用時間が1時間ごとの区分に変更される予定となっています。あわせて、通所リハビリ(デイケア)の利用時間も、4時間以上の利用については2時間ごとの区分となっていたのが、1時間ごとの区分に統一されます。こうした改定の影響により、施設によっては利用時間の短縮などの変更がおこなわれる可能性もあります。

生活援助サービスの上限設定は見送りに

山積みのブロック

今回の介護報酬改定に際しては、訪問介護サービスにおける調理や洗濯といった生活援助について、介護報酬に上限を設定することで、利用回数を制限することも議論されていました。

これは、社会保障費を抑制する目的で財務省から要請が出されていたものですが、今回は上限の設定は見送られ、利用回数が多い場合には自治体がチェックをおこなう仕組みが創設されることになりました。その一方で今回の改定には、生活援助を担う人材を確保するための新たな研修制度を創設することも盛り込まれています。なお、この研修制度については、現在の訪問介護員の研修時間(130時間)よりも短いものが予定されているとのことです。

介護職員の処遇改善策は先送りに

2018年度の介護報酬改定では、ターミナルケアや看取りに力を入れている訪問看護事業所や特養をより手厚く評価する見直しがおこなわれる予定ですが、こうした改定は「施設から、地域・在宅へ」という政府の方針をより強くあらわしたものといえるでしょう。

これは、介護人材や施設の不足に対応するべく厚生労働省が推進している地域包括ケアシステムに関連したプランですが、その一方で今回の改定には介護人材を確保するための介護職員の処遇改善策は盛り込まれず、人手不足への対策は、介護ロボット(見守り機器)を導入した施設への評価が新設されたことなどにとどまっています。

政府は2017年12月に公表した「新しい経済政策パッケージ」において、勤続10年以上の介護福祉士を対象とした月額8万円程度の処遇改善策を2019年10月から実施することを報告していますが、慢性的な人手不足に悩まされている介護施設や事業所では、介護人材の不足を早急に解消するためのさらなる対策が切実に求められているのも実情といえるでしょう。

※地域包括ケアシステム…厚生労働省が2025年をめどに推進している、高齢者が住みなれた地域で、可能な限り自立して生活することを包括的に支援するシステム。

▼参考資料
・平成30年度介護報酬改定の主な事項について 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000192300.pdf

・2016年(1-12月)「老人福祉・介護事業」の倒産状況 株式会社 東京商工リサーチ
http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20170111_01.html

・介護報酬改定 利用者本位を忘れずに(社説) 朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/DA3S13335157.html

・介護職員の処遇改善、置き去り 報酬 自立支援に重点 東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201801/CK2018012702000125.html

・新しい経済政策パッケージについて(2-7 介護職員の処遇改善) 内閣府
http://www5.cao.go.jp/keizai1/package/20171208_package.pdf

介護ぱど運営事務局