2018年03月27日

【年金だけで老人ホームへ入居することは可能?】特養やケアハウスの実際の月額費用は

年金手帳

2018年2月、政府は「高齢社会対策大綱」において、公的年金の支給開始年齢を70歳よりも後に遅らせることができる仕組みを検討していることを公表しました。

これは、現在の国民年金(老齢年金)の支給開始年齢である65歳を過ぎても元気で働いている高齢者が増えていることなどから、年金の加入者が受給のスタートを70歳よりも後にずらすことを選べるようにするものです。その一方で、厚生労働省がおこなっている「国民生活基礎調査」(2016年版)では、高齢者世帯(※)の半数以上(54.1%)が公的年金や恩給のみで生活していることも報告されています。ここではこうした現状を踏まえ年金のみで入居できる老人ホームや、その費用の実際について解説していきます。

※高齢者世帯…65歳以上の人のみの世帯、またはこれに18歳未満の未婚の人が加わった世帯。

▼参考資料
平成28年 国民生活基礎調査の概況(各種世帯の所得等の状況) 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/dl/03.pdf

高齢者に支給される年金の平均額は

老人ホームを選ぶ際には月々の費用を無理なく支払っていけることも重要なポイントとなりますが、特に年金収入のみの世帯においては、受給している年金の額と老人ホームに支払う費用のバランスを考えて施設を選ぶことが大切です。ちなみに厚生労働省が「平成28年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」で公表している老齢年金の月あたりの平均受給額は下記のとおりです。

国民年金のみの受給者…5万5千464円
厚生年金の加入者…14万7927円 

一方、政府が定めた平成28年度の国民年金(老齢基礎年金)の満額は月額6万5千8円となっていますが、これは20歳から60歳までの40年のあいだ遅延や滞納をせずに保険料を全額納付した人が受け取れる金額であり、実際の平均額はこれよりも下回る結果が報告されています。一方、厚生年金については加入期間や報酬によって支給される額が異なるため男女の平均額の差が大きく、男性の受給権者の年金平均月額が16万6863円なのに対し、女性では10万2708円となっています。

日本の公的年金制度は、国内に住む20歳以上の人すべてが加入している国民年金(基礎年金)と、会社員や公務員などが加入する厚生年金共済年金による「二階建て」方式であり、国民年金については年金保険料を納めている人であれば、誰もが65歳から老齢基礎年金(一階部分)を受け取ることができますが、上乗せ分(二階部分)については厚生年金や共済年金に加入している人しか受け取ることができません。そのため自営業の人などにおいては、老後の生活を基礎年金のみでやりくりしなければならないというケースも多く見られます。

▼参考資料
・平成28年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12500000-Nenkinkyoku/H28.pdf

国民年金だけでは老人ホームに入居できない?

高齢者と介護士

しかし、上で述べた老齢基礎年金の平均月額5万5千円で入居できる介護施設は決して多いとはいえません。費用を安く抑えられる介護施設としてまずあげられるのは、公的な老人ホームである介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム・特養)です。特養は月額利用料が比較的安いというだけでなく、入居時にかかる一時金も不要のため、資産や貯蓄が少ない人でも入居しやすいというメリットがあります。

特養の月額利用料は施設サービス費(介護サービス料の自己負担分)・食費・居住費(部屋代)・日常生活費(日常の消耗品代など)などで構成されており、要介護度が重くなるほど介護サービス料は高くなります。また特養には、2~4人程度の相部屋である多床室と個室(共有スペースなし)の従来型のほか、入居者を10人程度のグループに分け、個室や仕切りなどによって分けられた準個室に、グループで共有するリビングや食堂を併設したユニット型と呼ばれるタイプの施設があります。このうち月額利用料がもっとも安いのは従来型の多床室であり、ユニット型は従来型よりも施設サービス費や居住費が高額に設定されています。

ちなみに国が示している特養の標準的な利用料の例では、要介護5の人が多床室を利用した場合で月額約10万1700円、要介護5の人がユニット型個室を利用した場合で約13万9千円の費用がかかるとされていますが、このままの金額では、厚生年金を受給している人ならともかく、国民年金のみの人には入居が難しいといわざるを得ません。

しかし、特養は介護保険による公的な施設サービスであることから、さまざまな減免制度が適用されるため、これらを利用することで月額費用を上記の金額よりもかなり低く抑えることができるケースもあります。

▼参考資料
・サービスにかかる利用料 厚生労働省
http://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html

特養の月額費用が5万円程度に抑えられるケースも

それでは実際に、特養のどの部分にどのような減免制度が適用されるか見ていきましょう。

まず、月額利用料の施設サービス費(介護サービス料の自己負担分)ですが、この部分には高額介護サービス費という制度が適用されます。この制度は、所得に応じて利用者を4段階に分けて1万5千円~4万4400円という上限額を設定し、1ヶ月に利用した介護保険による介護サービスの費用が上限額を超えた場合に、超えた分の金額が介護保険から支給されるシステムとなっています。この制度による区分では、所得が上記の平均月額程度の国民年金のみという人は第2段階(前年の合計所得金額と公的年金収入額の合計が年間80万円以下)に相当するため、施設サービス費の自己負担の上限額は1万5千円となります。

さらに食費と居住費の部分については、特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)という制度が適用されます。この制度は所得や資産などが一定以下の人に対して、介護保険施設の居住費と食費の負担額の一部が介護保険から支給されるものであり、高額介護サービス費と同様に利用者を所得に応じて4段階に区分し、自己負担の上限額(負担限度額)を設定して減免をおこないます。この制度でも、所得が平均月額程度の国民年金のみという人は第2段階(前年の合計所得金額と公的年金収入額の合計が年間80万円以下)にあてはまるため、特養の場合は食費の1日あたりの負担限度額が390円、居住費の1日あたりの負担限度額が370円となります。

そのため、第2段階の所得区分にあてはまる人が上記の2つの制度を利用した場合、特養の多床室であれば、施設サービス費1万5千円+居住費1万1100円+食費1万1千700円に、仮に日常生活費を1万円として計算すると、月額利用料は4万7800円で済むことになります。もちろん、前年の所得の金額や部屋のタイプ、施設による細かな費用の違いなどはありますが、特養であれば国民年金のみの収入でも入居は可能といえそうです。

なお、これらの減免制度は、特養だけでなく介護老人保健施設(老健)や介護型療養病床に入居した際にも適用されます。

▼参考資料
・介護保険で利用できるサービス(料金の一覧など) 横浜市
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/kourei/riyousya/aramashi/pdf/service.pdf

軽費老人ホーム(ケアハウス)ってどんな施設?

ポイント

また、特養以外で入居費用が安く抑えられる施設としては軽費老人ホームがあります。

軽費老人ホームは家庭環境や経済状況などの理由により自宅で生活することが困難な高齢者が低料金で入居できる住宅として、老人福祉法に基づき設置された施設であり、サービス内容などによって下記の3タイプに分類されます。(A型とB型の施設については現在は新設がおこなわれていないため減少傾向にあり、今後は軽費老人ホームはC型(ケアハウス)に一本化される見通し)

・軽費老人ホームA型…収入が一定以下であり、家庭環境などの事情により家族との同居が困難な高齢者を対象とした住宅。食事や入浴などの生活支援が提供される。
・軽費老人ホームB型…上記のA型から食事サービスを抜いたもの。介護職員の配置もなく、より住居としての意味合いが強い。

・軽費老人ホームC型(ケアハウス)…家族との同居が困難な高齢者を対象とした施設という点ではA型・B型と同じだが、施設のバリアフリー化やプライバシーへの配慮など、より現代のニーズに合わせた設備が特徴。食事の提供や入浴のサポートなどの生活支援や見守り、生活相談などのサービスを中心とした「自立型」と、これらに加えて介護サービスが受けられる「介護型」の2種類がある。

軽費老人ホームは、介護保険法上は居宅に分類されるため、介護サービスを受ける際には訪問介護など外部の事業者を利用することができます。その一方で、近年では「介護型」のケアハウスのように、特定施設入居者介護(※)の指定を受け、同じ施設内で包括的に介護サービスを提供する軽費老人ホームも増えてきています。さらに東京や大阪といった都市部では、地価や人件費の高い都市部でも整備が進むように、職員配置や居室面積の基準が緩和された都市型軽費老人ホームの設置もおこなわれています。

軽費老人ホームA型の月額費用の目安は6~17万円程度(食事代込み)、B型の月額費用の目安は3~4万円程度(食事代を含む生活費はすべて実費)となっており、所得が低い人ほど利用料が安くなるように設定されています。また、入居条件はいずれも60歳以上(夫婦で入居する場合はどちらかが60歳以上)の高齢者で、自立した生活に不安のある人家族の援助が受けられない人となっています。

ケアハウス(軽費老人ホームC型)の入居条件については、「自立型」はA型・B型と変わりませんが、「介護型」については65歳以上で要介護1以上の人とされており、両者とも月額費用の目安は6~17万円程度となっています。都市型軽費老人ホームの入居条件もA型やB型と同様ですが、東京都を例にとると、費用については入居一時金はなしで月額10~12万円程度(収入認定による減免後の本人負担額)という金額が例示されています。

なお、費用については上記はあくまで目安であり、なかには入居一時金(保証金)や管理費、上乗せの介護サービス料が必要な施設もあります。また入居条件も「感染症がないこと」「共同生活が可能なこと」「所得が一定以下」など、施設によって異なる部分があるため、軽費老人ホームへの入居を考える際には、施設に具体的な費用や入居条件を確認することが必要です。各地域の軽費老人ホームについては、都道府県や市町村のホームページなどに一覧が掲載されています。

※特定施設入居者生活介護…介護付き有料老人ホームや、サービス付き高齢者向け住宅などが、介護保険の指定を受けた上で提供する食事や入浴、機能訓練などのサービス。

▼参考資料
・軽費老人ホーム(ケアハウス)とは? 一般社団法人 全国軽費老人ホーム協議会
http://www.zenkeikyo.com/about.html

・都市型軽費老人ホーム 施設の特徴と事例 東京都福祉保健局http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kourei/koho/toshigata2.files/toshigata.pdf

減免制度や費用については専門家に相談することも大切

上記の特養や軽費老人ホームについては、費用が安く抑えられる反面、施設の数が限られているため、申し込みをしてもなかなか入居できない「入居待ち」の問題があるのも実情です。そのため、こうした施設への入居を考える際は、早めに情報を収集し、申し込みをおこなっておくことが重要となります。

所得が年金のみの世帯に限らず、無理なく費用が払えることは老人ホーム選びの重要なポイントですが、利用料に関するトラブルを防ぐためには、本人や家族だけで考えるのではなく、ケアマネジャー(介護支援専門員)地域包括支援センター市町村の高齢者福祉に関する窓口などに相談し、自分に合った予算で利用できる施設や減免制度についてしっかりと把握しておくことも大切といえるでしょう。

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