2018年03月29日

【定年退職後の再就職】「働ける人」「働けない人」の違いとは

仕事をする高齢者女性

2018年2月、政府が「65歳以上」という高齢者の定義を見直すことや、公的年金の受給開始を70歳以降にずらすことが選択できる制度の検討などを盛り込んだ高齢社会対策大綱の見直し案をまとめたことが報じられました。

これは今後の政府の高齢者対策の指針となるものですが、今回の見直し案では、65歳までの定年の延長・65歳以降の雇用延長などをおこなう企業に対する支援拡充や、ハローワークにおける生涯現役支援窓口の設置といった高齢者の就労促進が打ち出されていることも大きな特徴となっています。

少子高齢化による労働力の不足が問題に

今回、政府がこうした方針を打ち出した背景には、国内で急速に進む高齢化の問題があります。

総務省統計局の資料よれば、日本の総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は2017年に27.7%となり過去最高を更新したとのことですが、同資料では国内における高齢者の人口が1950年から増加を続けており、日本の高齢者人口の割合が世界で最高となったことも報告されています。一方、2017年には国内の出生数は過去最少となり、日本の総人口は8年連続で減少。おもな働き手とされる15歳~64歳の生産年齢人口も減りつづけています。

このように、高齢化の急速な進展は介護費や医療費の増大だけでなく、労働現場における人手不足にもつながっているのです。

60歳代では「働けるうちはいつまでも働きたい」という人が最多

多数派

上記のようなデータを背景に、政府は高齢者の健康寿命(※)を延ばし、社会の担い手として活用するプランを検討している訳ですが、その一方で実際に老後も「働きつづけたい」と考えているシニアはどれぐらいいるのでしょうか?

内閣府が2014年に全国の60歳以上の男女を対象としておこなった調査では、約3割(28.9%)の人が「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答。次いで多かったのが「70歳くらいまで」または「65歳くらいまで」働きたいと回答した人で、いずれも全体の16.6%となっていました。また、調査の時点で仕事をしている人のみを対象として集計しなおした結果では、約4割(42.0%)の人が「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答していたことも内閣府の資料では報告されています。

また、独立行政法人 労働政策研修・研究機構(JILPT)が2014年におこなった調査によれば、60歳代の就業者においては働く理由として「経済上の理由」をあげた人がもっとも多く(71.4%・複数回答可)、2番目に「生きがい、社会参加のため」(31.5%)をあげた人が多かったとのこと。こうした調査結果からは、多くの高齢者が退職後に年金や貯蓄のみで生活することに不安を持っている(あるいは年金や貯蓄のみで生活することが困難な)現状や、働くことが高齢者の生きがいに大きく関わっていることなどが伺えます。

※健康寿命…WHO(世界保健機関)が提唱する、「健康上の問題で制限されることなく自立した日常生活をおくれる期間」のこと。

定年退職後も半数以上の人が働いている

一方、「高齢になっても働きたい」という人が多い現状を反映するように、上記のJILPTの調査では、55歳当時に仕事をしていた人の半数以上(56.3%)が定年退職の直後(あるいは定年前に仕事を辞めた直後)に再就職をしていたことが報告されています。

男女の別でみると男性61.7%、女性46.0%と男性のほうが再就職率は高く、再就職後の仕事内容については、男性は「専門・技術的な仕事」に就いた人がもっとも多く、女性は「サービスの仕事」に就いた人がもっとも多い結果となっていました。

ちなみに政府は、2013年に「定年年齢の65歳までの引き上げ」「希望者全員を対象とする65歳までの継続雇用制度の導入」「定年制の廃止」のいずれかの措置を事業主に義務付ける高年齢者雇用安定法を施行していますが、同調査では再就職時に前と同じ職種に就いた人が8割を超えていることや、再就職した人の半数以上(55.2%)が勤務先の会社による「再雇用・勤務延長」の制度によって就業したことも報告されています。ただし、60歳代前半では「再雇用・勤務延長」により就業した人の約7割(70.7%)が定年前とおなじ勤務先で就業していますが、60歳代後半では同じ勤務先で就業した人は3割未満(28.3%)と大幅に減少しています。

また同調査では、調査時(2014年6月)に仕事をしていなかった60歳代の人が全体の半数近く(44.5%)にのぼり、そのうち26%の人が「仕事をしたいと思いながら、仕事に就けなかった」ことも報告されていました。さらに、このように就業を希望しながら仕事に就けなかった人にその理由を尋ねたところ、「適当な仕事が見つからなかった」と回答した人がもっとも多く(36.2%)、次いで「本人の健康上の理由」(32.7%)で就業できなかった人が多いことも判明しています。

「生きがい」と「収入」のバランスも大切

書類を持つ高齢者女性

また上記の調査では、「家族の健康上の理由(介護など)」で「働きたいけど働けない」と回答した人が15.9%いたことも報告されていますが、高齢になると、本人や家族の健康状態をはじめとするさまざまな理由により、再就職のハードルが高くなる面があるのも実情です。

その一方で、近年はシニア世代に特化した求人サイトや、「シニア」「60歳以上」といった選択肢で仕事を検索できるアルバイト情報サイトなども増えていることから、条件や職種にこだわらなければ、以前よりも高齢者が仕事を探しやすいといえるかもしれません。ところで、実際にこうしたサイトで募集されている仕事の内容を見てみると、管理・清掃・警備といった業務の求人が多いことがわかりますが、なかでもずば抜けて多いのが介護関連の求人です。

近年では介護現場における人材不足も社会問題となっていますが、老人ホームやデイサービスといった介護施設や訪問介護事業所などでは、60歳代の介護職員や看護職員が活躍しているケースも多く見られます。また、こうした介護の現場においては、シニア層のスタッフは経験豊富で利用者と年齢が近いぶんコミュニケーションが取りやすく、重宝されるケースも多いようです。ただし、介護の仕事には夜勤や力仕事もあるため、シニア層の場合は体力に応じて仕事を選ぶことも重要となります。介護職員や看護職員以外で60歳代~70歳代のスタッフが活躍する職種としては、送迎ドライバーや調理といった仕事もあげられます。

またシニアの再就職については、求人にアルバイトやパートという雇用形態が多いことなどから、正社員として働いていた人が当時と同レベルの賃金を求めるのは難しいという側面もあります。実際に上記のJILPTの調査では、60歳代で雇用されている人における正社員の比率が、55歳当時に雇用者として働いていた人の正社員の比率(65.2%)とくらべて、60歳代前半では22.5%、60歳代後半では19.1%と大幅に減少していることも報告されています。

またアルバイトやパート以外で高齢者に仕事を斡旋する組織としては、都道府県知事の指定を受けて各市区町村に設置されているシルバー人材センターがありますが、同センターの場合は「生きがいを得るための就業」に重きを置いているため、仕事の発注者と就業する高齢者のあいだに雇用関係はなく、最低賃金も保証されていないのが実情です。もちろんシルバー人材センターでも、ある程度の収入の目安は例示されていますが、こうした例から考えると、高齢者の就業においては「生きがい」と「収入」のバランスも重要なポイントといえるかもしれません。

健康・体力の維持と学習意欲を持つことが「生涯現役」の条件に

上記のJILPTの調査で、現在働いている60歳代の人々に「65歳を過ぎても仕事に採用されるために必要なことは?」という質問をおこなったところ、もっとも多くの人があげたのが健康・体力という答えでした。高齢者においては、再就職後の仕事が「体力的に厳しくて続けられない」というケースも多く見られますが、こうしたことを考えると、年齢を重ねるほど健康や体力の維持が仕事を続けていくために欠かせないものになるといえそうです。ただしこれは働く側だけの問題ではなく、高齢者が「無理せず働き、正当な収入を得られる」環境を整備することが、政府や事業者に求められているともいえます。

また政府は、冒頭に述べた「高齢社会対策大綱」において、ICT(情報通信技術)を用いた在宅勤務などのテレワークの普及拡大を推進する方針も述べていますが、こうした新しいワークスタイルは、自宅での短時間勤務などを可能にする点で高齢者にも無理なく働ける面がある一方で、インターネットやパソコンに関する知識や技能を必要とするため、高齢者にとってハードルが高くなってしまう部分があるのも実情です。

このように働き方が多様化している現代では、高齢者においても「いくつになっても新たな知識や技能を身につけたい」という学習意欲を持つことが、再就職や「生涯現役」の重要な条件といえるかもしれません。

▼参考資料
・高齢社会対策大綱 内閣府
http://www.jil.go.jp/institute/research/2015/documents/0135_01.pdf

・「高齢者の日常生活に関する意識調査」結果(概要) 内閣府
http://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h26/sougou/gaiyo/pdf/kekka1.pdf

・60代の雇用・生活調査 独立行政法人 労働政策研修・研究機構(JILPT)
http://www.jil.go.jp/institute/research/2015/documents/0135_01.pdf

・「高年齢者雇用安定法」のポイント 厚生労働省
http://kumamoto-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/library/kumamoto-roudoukyoku/taisaku/kounennreisya/koureikakuhosoti201319.pdf

・シルバー人材センター事業のしくみ 公益社団法人 全国シルバー人材センター事業協会
http://www.zsjc.or.jp/about/about_05.html

介護ぱど運営事務局