2018年04月25日

介護難民が2025年には全国で約43万人になるという試算…政府の施策や自分でできる予防策は?

難民

近年、国内においては高齢化が急速に進展している状況ですが、そこで大きな問題となっているのが介護難民の増加です。

もともと介護難民とは、介護を必要とする状態でありながら介護施設に入ることができず、家庭でも適切な介護を受けることができない高齢者や障がい者、障がい児などを指す言葉ですが、ここではおもに高齢者の介護難民について解説していきます。

なぜ介護難民が増えるのか?

2015年6月、元総務相を座長とする民間の有識者団体・日本創成会議が、2025年には全国で約43万人が介護難民になるという試算を発表しました。こうした試算がおこなわれた背景には、高齢化の進展に伴い、介護を必要とする高齢者が増えつづけている現状があったといいます。

厚生労働省の調べでは、2003年には約370万人だった国内における要介護・要支援認定者の数は、2015年3月には約606万人にまで増加。内閣府の資料では、なかでも75歳以上の後期高齢者における要介護・要支援認定者が急速に増加していることも指摘されています。また、2025年には日本の総人口に多くの割合を占める団塊の世代(1947年~1949年の第一次ベビーブームの時期に生まれた人)がすべて75歳以上の後期高齢者となりますが、冒頭に述べた「2025年には介護難民が約43万人」という試算は、こうした現状を背景におこなわれたものといえます。

なお、2025年には特に東京圏(神奈川、千葉、埼玉などを含む東京への通勤圏)において介護施設の深刻な不足が起きることが懸念されていますが、これは団塊の世代が1960年代~1970年代初頭にかけての高度経済成長期に、集団就職などで地方から東京に大規模な流入をして、人口が東京圏に一極集中したことによるものといわれています。

逆に地方の町村部などにおいては、大都市への若者の流出や高齢化の進展による労働力不足が深刻化しつつあり、こうした地域では「介護施設はあっても、介護や医療の現場で働く人材がいない」というケースも見られます。近年ではこうした介護人材の不足も全国各地で問題となっていますが、「低賃金・重労働」というイメージの強い介護職には、実際の業務の大変さもあり、人材がなかなか定着しないという現実もあります。

介護難民を減らすためにおこなわれている施策は

パズルのピースをはめる

まず、政府がおこなっている介護施設不足への対策としては、厚生労働省が2025年を目途に構築を進めている地域包括ケアシステムがあげられます。

地域包括ケアシステムとは、政府の資料によれば「高齢者が重度な要介護状態となっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるように、住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供するシステム」であり、高齢者の介護を「施設から地域や在宅へ」移行させることを進める取り組みともいえます。

一方、上記の地域包括ケアシステムが「高齢者が住み慣れた地域で暮らしていくためのケア」を打ち出した施策であるのに対し、日本創成会議は東京圏の高齢化による危機を回避する戦略のひとつとして、高齢者の地方への移住をあげています。ちなみに日本創成会議では、独自の計算方式で国内の地域の介護・医療の充実度を推計し、「医療・介護の余力がある移住におすすめの地域」も公表していますが、近隣の地域ならいざ知らず、縁もゆかりもない遠く離れた地域への移住は、高齢者の心身への負担が懸念されることもあり、賛否両論が分かれるところです。

しかし同会議の試算では「2025年には東京圏だけで約13万人が介護難民になる」という報告もおこなわれており、介護難民の問題には、東京圏への人口の一極集中を解消しなければ解決しない側面があるのも事実といえそうです。

また2016年には、介護施設の不足を緩和するため、政府が首都圏を中心に空き家を介護サービスや医療ケアに対応した住宅として転用し、整備していく方針を表明したことが報じられましたが、近年では民間企業でも空き家を介護・福祉の拠点として活用する事業を展開する事例も見られるようになってきました。こうした取り組みは、介護施設の不足だけでなく、全国的に問題となっている空き家の増加にも対応するものであり、今後の進展が期待される事業といえるでしょう。

さらに介護人材不足への対策としては、政府が近年おこなっている外国人介護士の受け入れに関する施策があげられます。従来は介護現場で働くための就労ビザがなかったことから、外国人が日本において介護職に就くことはできませんでしたが、2008年からは経済連携協定(EPA)によってフィリピン、ベトナム、インドネシアの若者らが介護現場で働くことができるようになりました。また2017年9月には、日本の養成校で2年以上学んだ外国人が、介護福祉士として日本に在留する資格を得られるよう法律が改正されたほか、同年11月には外国人技能実習生の働く場に「介護」が加えられるなど、介護現場に外国人を受け入れる仕組みは徐々に拡大しているといえます。ただし、こうした制度を利用して来日した外国人介護士については、介護人材不足を緩和する存在として期待が寄せられる一方で、現場でのコミュニケーションや就労後のケアなど多くの課題も指摘されています。

介護難民にならないためにできることは?

考える女性

これまで介護難民の問題について述べてきましたが、それではわたしたち自身が介護難民にならないためには、いったいどのようなことに気をつければよいのでしょうか?

現在、国内においては、介護に使える資金が多ければ多いほど利用できる介護サービスや入居できる施設の選択肢が多くなり、逆に資金が少ないと利用できる施設が費用の比較的安い公的なものに限られてしまう現状があります。これは、老後の所得や資産が多い人は介護難民になりにくいということを意味していますが、こうした点を考えると、介護難民になるのを防ぐうえで老後の資金計画は重要なポイントといえそうです。

その一方で、お金では買えない要素に自分自身の健康があります。一般的に、年齢を重ねるほど健康状態や身体機能の個人差は大きくなっていきますが、高齢者のなかには、大きな病気や怪我をしなくても70歳代で寝たきりになったり重度の認知症を患ったりする人もいれば、80歳を過ぎても元気に働いている人もいます。そして、いくつになっても心身が健康な人は介護サービスに頼る必要がなく、当然ながら介護難民になる心配もありません。

近年国内においては、実際の寿命だけでなく、介護や医療に頼らずに自立して生活できる期間をあらわす健康寿命の延伸が大きな課題となっていますが、高齢になってもいきいきと健康的に暮らしていくためには、日常生活に運動習慣を取り入れたり、食生活や嗜好品などの生活習慣を見直したりするなどして、高齢に差しかかる前の早い段階から健康状態や身体機能の維持・向上につとめておくことも必要といえるでしょう。

さらにもうひとつ、介護難民にならないための重要な要素として、家族や親族、友人や知人といった人とのつながりがあげられます。もし入居できる老人ホームがなかったとしても、家族のサポートがあれば、在宅で訪問介護訪問看護を組み合わせて無理なく生活をおくれる可能性が高くなりますし、ひとり暮らしの高齢者においては、ときどき様子を見に来てくれる家族や親族、困ったときにお互いに助けあえる友人・知人の存在が、生活の支えとなる場合もあります。また、こうした家族や友人のあいだで介護に関する知識や情報を共有することも、適切な介護サービスを受けるうえでは大切なことといえるでしょう。

なお、介護に関する相談は家族や友人だけでなく、各地域に設けられた地域包括支援センター福祉事務所社会福祉協議会などでおこなうこともできます。「入居できる施設がない」「介護サービスを受けたいがどうしていいかわからない」といった悩みがある場合には、まずはこうした窓口において専門家に相談してみることが、介護難民になることを予防する第一歩といえるかもしれませんね。

▼参考資料
・2025年…「介護難民」受け皿どうする? 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/matome/20150605-OYT8T50144.html

・平成28年版高齢社会白書(全体版) 高齢者の健康と福祉 内閣府
http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2016/html/zenbun/s1_2_3.html

・要介護認定600万人超す 1年で22万人増 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFS08H2A_Y5A800C1NN1000/

・東京圏高齢化危機回避戦略(概要版) 日本創成会議
http://www.policycouncil.jp/pdf/prop04/prop04_digest.pdf

・ヒューマンリンク、空き家を介護・福祉の拠点に 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26737530Z00C18A2L41000/

・なぜ外国人が日本で介護の仕事を? ヨミドクター(読売新聞)
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20180122-OYTET50024/

・地域包括支援センター一覧 一般社団法人 認知症予防協会
http://www.ninchi-k.com/?page_id=60

・日常生活自立支援事業パンフレット 社会福祉法人 全国社会福祉協議会
http://www.shakyo.or.jp/news/kako/materials/100517/nshien_1.pdf

介護ぱど運営事務局