2018年05月16日

【成年後見制度で受けられるサポートとは】制度の利用により安心が得られる一方で、悪用への懸念も

スーツ姿の女性

近年、高齢者が悪質商法の被害にあうケースが増えており、国民生活センターなどが注意を呼びかけています。

特に認知症などで判断能力が不十分な高齢者においては、介護施設への入居契約もままならないケースも多く、施設への入居以外でも、一方的に不利な契約を結ばされたり、不要な商品を購入させられたりといったケースも少なくありません。成年後見制度は、このような契約や相続のトラブルから認知症の高齢者や知的障害者、精神障害者などを守り、日常生活を支障なくおくったり、適切な財産管理ができたりするようにサポートするものといえます。

法定後見制度は「すでに判断能力が不十分になっている人」をサポート

成年後見制度には、家族などの申し立てにより家庭裁判所が後見人等を選ぶ法定後見制度と、本人に十分な判断能力があるうちに代理人を選んでおく任意後見制度の2種類があります。

まず法定後見制度ですが、これは家族などが家庭裁判所に申し立てをおこない、成年後見人等を選んでもらう制度です。法定後見制度は後見・保佐・補助の3つに分かれており、本人の判断能力の程度などの事情に応じて制度を選べるようになっています。家庭裁判所に申し立てをおこなうことができるのは、本人や配偶者、4親等以内の親族などですが、本人のまわりに申し立てをおこなえる家族や親族がいない場合には、居住する地域の市町村長が申し立てをおこなうケースもあります。

なお法定後見制度の3つの類型に対しておこなわれる支援の内容は下記のとおりとなっています。

後見…「買い物が一人でできない」など、日常生活において判断能力が欠けているのが通常の状態であると診断された人を対象とする支援。支援をおこなう人は後見人と呼ばれます。後見人は財産に関するすべての法律行為を本人に代わっておこなうことができ、日常生活に関すること(たとえば日用品の購入など)以外のすべての契約などについて取り消しをおこなうこともできます。

保佐…「不動産の売却や賃貸借を一人でできない」など、判断能力が著しく不十分と診断される人に対しておこなわれる支援。支援をおこなう人は保佐人と呼ばれます。保佐人は、家庭裁判所への申し立ての際に本人が選択した特定の法律行為について代理権同意権取消権などに基づいた支援をおこないます。ちなみに、ここでいう代理権とは本人に代わって契約などをおこなう権利、取消権は本人に不利益と判断される法律行為を取り消す権利、同意権は本人の契約などに同意を与えたり、同意を与えていない契約を本人がおこなった場合に取り消しをおこなったりする権利を指します。また民法第13条第1項に挙げられた、借金、訴訟行為、相続の承認・放棄、新築・改築・増築などの行為についても、保佐人には同意権や取消権が与えられます。

補助…さまざまな法律行為について「一人でできるかもしれないが不安がある」という人に対しておこなわれる支援が補助であり、支援をおこなう人は補助人と呼ばれます。補助人の職務については、「本人が選択した特定の法律行為について代理権や同意権、取消権などに基づき支援をおこなう」という点は保佐人とおなじですが、補助人の場合は与えられる同意権・取消権の対象が、上記の民法第13条第1項で定められているものに限られます。

任意後見制度では「判断能力が衰える前に」代理人を選ぶ

握手

一方、任意後見制度は十分な判断能力があるうちに、判断能力が衰えた場合に備えて本人があらかじめ代理人(任意後見人)を選んでおく制度であり、代理人との契約は公証人が作成する公正証書によっておこなわれます。任意後見人を誰にするかについては本人が自由に決めることができますが、法定後見人とは違い、任意後見人に与えられるのは代理権のみであり、本人の代わりに契約の取り消しなどをおこなうことはできません。任意後見制度は、もし将来的に判断能力が衰えたとしても、生活や医療・看護・介護、財産管理などについて、本人の意思を尊重・反映して選択や判断をおこなうための制度といえるでしょう。

任意後見人が実際に仕事をスタートするのは、本人の判断能力が衰えたときとなりますが、その際には任意後見人の仕事を監督する任意後見監督人を家庭裁判所が選ぶことになります。なお、すでに判断能力に不安がある人の場合には、公証役場で後見人の契約手続きをおこなうのと同時に、家庭裁判所に任意後見監督人選任の申し立てをすれば、裁判所の審査期間(通常は2ヶ月~4ヶ月程度)を経て、すぐに任意後見人のサポートを受けることも可能です。

「悪い後見人」を選ばないためには

国内における高齢化の進展に伴い、財産管理や契約などについてサポートを必要とする人が増えている現状を踏まえ、政府は2016年5月に成年後見制度の利用促進に関する法律(成年後見制度利用促進法)を施行しました。政府の資料によれば、2016年の段階で後見制度を利用している人は国内で19万人を超えており、今後もさらなる利用者の増加が見込まれるとのことです。

その一方で、近年では後見人による財産の着服など、後見制度を悪用した犯罪も社会問題となっています。2015年1月には大阪で後見契約を結んだ高齢者の預金約174万円を着服した行政書士が逮捕されたほか、同年5月には愛媛・松山市で、後見人を務めていた50代男性の保険金約2200万円を着服したとして弁護士が逮捕されるなど、法律の専門家による制度の悪用事例が相次いで報告され、2018年に入ってからも佐賀県で後見制度を悪用して計2755万円を横領した社会福祉士が逮捕されたことが報じられました。

良い後見人を選ぶことができれば、利用者は安心して以前よりも充実した生活をおくることができますが、悪い後見人と契約してしまった場合、犯罪とまではいかなくても、「住んでいる家を売られた」「本人の意思に反する施設に入れられた」「自分のお金が自由に使えず、生活費が足りない」など、以前よりも生活状態が悪化してしまうおそれもあるため、後見人に関するトラブルの解決を支援する専門機関である一般社団法人「後見の杜」では注意を促しています。

なお「後見の杜」では、良い後見人を選ぶポイントとして、

・被後見人のところへ45分以内で来られる
・きちんとコミュニケーションがとれる
・後見について具体的な展望や計画がある

ことをあげています。

成年後見制度の利用に関する相談は、地域包括支援センターや地域の社会福祉協議会、公益社団法人 成年後見センター(リーガルサポート)などの窓口で受けつけていますが、特に弁護士や司法書士といった見知らぬ第三者に後見人を依頼する場合には、いかにして信頼できる人を選ぶかということも重要なポイントといえるでしょう。

制度を十分に理解した上で、利用を検討することが大切

話し合う家族

2018年2月、政府がさまざまな法律における成年後見制度の扱いを抜本的に見直す方針を固めたことが報じられました。これは、同制度を利用している人が公務員など一部の職業に就けなかったり、制度を利用すると就業のために必要な資格を失ったりするケースが相次いでいるためで、政府は2019年5月までに約180の法律の見直しをおこない、成年後見制度を利用すると資格を失ったり、公務員などの一部の職業に就けなくなったりするよう定められた「欠格条項」を、すべて削除する方針とのことです。このように成年後見制度は、介護保険制度と同じく2000年に施行された制度であり、運用からまだ日が浅いことから、悪用の防止策などまだまだ見直しの余地が多いのも実情といえます。

さらに成年後見制度を利用した際の費用は全額が自己負担となるため、利用するサポートや契約の内容によって金額は異なりますが、後見人等に支払う費用はトータルで数十万~数百万円かかることになります。そのため、成年後見制度の利用を考える際には、まずは「制度の利用が本当に必要なのか」をあらためて検討してみることも大切といえます。

判断能力の衰えがそれほど進んでいない状態であれば、本人が後見人を選べる任意後見制度を利用する方法もありますが、いずれにしても後見制度によって選ばれた代理人には大きな権限が与えられることになるため、制度を利用する際には、制度の内容や費用、権限の範囲やトラブルが起きた際の対処法などについて、十分に理解しておくことが必要といえるでしょう。

▼参考資料
・高齢者の消費者被害 独立行政法人 国民生活センター
http://www.kokusen.go.jp/soudan_now/koureisya.html

・成年後見制度 法務省
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji17.html#a15

・成年後見制度とは 公益社団法人 成年後見センター
https://www.legal-support.or.jp/support

・成年後見制度の現状 内閣府
http://www.cao.go.jp/seinenkouken/iinkai/2_20161003/pdf/sankou_6.pdf

・成年後見の悪用被害56億円も、打つ手なし!? 産経WEST
https://www.sankei.com/west/news/150627/wst1506270077-n1.html

・成年後見制度を悪用、横領問題 対応後手、不正防げず 西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/saga/article/411872/

・一般社団法人 後見の杜
http://www.sk110.jp/

・成年後見制度を見直し 政府、職業制限の規定削除 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO26801590R10C18A2PE8000/

介護ぱど運営事務局