2018年06月13日

【後期高齢者医療制度】75歳以上の人が自動的に加入する公的保険制度の仕組みと注意点

高齢者夫婦

近年、政府を中心に「高齢者」の定義を引き上げようという提案や議論がおこなわれていますが、いまのところ国内においては、世界保健機関(WHO)の定義に沿って、基本的に65歳以上の人を高齢者とする定義が採用されています(2018年5月現在)。

一方、医療や介護の分野においては、65歳~74歳を「前期高齢者」、75歳以上を「後期高齢者」とする区分が用いられるケースも多く見られます。ここでは75歳以上の後期高齢者を対象とする保険制度の仕組みや注意点、年齢による高齢者の医療費の自己負担割合の変化などについて解説していきます。

後期高齢者医療制度とは

2008年4月、健康保険法等の一部を改正する法律が施行されたことにより、後期高齢者医療制度がスタートしました。これは、それまでの老人保健法に基づく老人医療制度とは異なる、まったく新たな医療制度といえます。後期高齢者医療制度の大きな特徴としては、下記の2点があげられます。

・75歳になるとすべての人が国民健康保険や社会保険から脱退し、自動的に後期高齢者だけの独立した医療制度に組み込まれる
・保険料は基本的に年金からの特別徴収(天引き)によって支払われる

なお、後期高齢者医療制度の事業をおこなうのは各都道府県に設けられた後期高齢者医療広域連合であり、他の都道府県に引っ越した際には、新しい居住地の広域連合が管轄する後期高齢者医療制度にあらためて加入することになります(旧居住地での被保険者資格は転出時に喪失となります)。ただし転居先が特別養護老人ホームなどの施設である場合には、それまで住んでいた都道府県の外であっても、転出前の居住地の広域連合の被保険者資格が継続されるケースもあります。

高齢者の医療費、自己負担の割合は?

医療費

後期高齢者医療制度の財源は、現役世代からの支援金(国保や健保などからの負担)が4割、国や地方自治体の負担が5割、被保険者の保険料が1割で構成されています。また窓口で支払う医療費についても、後期高齢者医療制度の加入者については原則として1割の自己負担となっています。ただし、一定以上の収入がある人は現役並み所得とみなされ、通常の国民健康保険などとおなじく、医療費の自己負担は3割となります。

一方、高齢者のなかでも65歳~69歳までは基本的に医療費の自己負担は3割となっていますが、70歳になると加入している保険者から「高齢受給者証」が支給され、窓口での自己負担は2割に軽減されます。ただし、こちらも現役並み所得の人については、それまでとおなじく3割負担が継続されます。

なお、それぞれの医療保険における現役並み所得の基準は下記のとおりです。

後期高齢者医療制度…世帯内に年間の課税所得(※)が145万円以上の被保険者がいる。
国民健康保険…世帯内に年間の課税所得が145万円以上の70~74歳の被保険者がいる。
社会保険などの被用者保険…70~74歳の被保険者の標準報酬月額(※)が28万円以上である。

ただし上記にあてはまる場合であっても、下記の条件を満たしている場合には、市区町村の窓口(被用者保険の場合は保険組合や協会などの保険者)に基準収入額適用申請をおこなうことによって、自己負担の割合を3割から1割に軽減できる場合があります。

後期高齢者医療制度…世帯の被保険者全員の収入(※)の合計額が年間520万円未満(世帯の被保険者が1人の場合は、収入が年間383万円未満)の場合。
国民健康保険…世帯の70~74歳の被保険者全員の収入の合計額が年間520万円未満(世帯の70~74歳の被保険者が1人の場合は収入が年間383万円未満)の場合。
社会保険などの被用者保険…70~74歳の被保険者と70~74歳の被扶養者の収入の合計額が年間520万円未満(70~74歳の被扶養者がいない場合は収入が年間383万円未満)の場合。

※課税所得…収入から公的年金控除や必要経費などさまざまな控除を差し引いた金額
※収入…各種の控除を差し引く前の金額
※標準報酬月額…被保険者が事業主から受ける毎月の給料や手当、賞与などの報酬を、区切りのよい幅で区分したもの。健康保険・厚生年金保険の保険料を決める際などに使用される。

所得が一定以下の人には保険料の軽減措置も

後期高齢者医療制度の保険料には所得が一定以下の人会社の健康保険などの被扶養者であった人を対象とした軽減措置も設けられています。

後期高齢者医療制度の保険料は、加入者全員が均等に負担する「均等割額」と、所得に応じて決められる「所得割額」の合計となっています。このうち所得が一定以下の人に対しては、所得に応じて均等割額の部分に2割~9割、所得割額の部分に25%または50%の軽減が適用されます。一方、会社の健康保険など(国保・国保組合を除く)の被扶養者だった人に対しては、保険料をおさめていなかった状態からの急激な変化を避けるため、後期高齢者医療制度に移行してから2年のあいだは、均等割額部分に5割の軽減が適用されます(2018年5月現在)。

なお後期高齢者医療制度における保険料の軽減については、特に所得の低い人に対する特例としてのさらなる軽減措置が2018年度までに段階的に廃止されたほか、東京都のように独自の軽減措置をおこなっている広域連合もあるなど、制度にやや複雑な面があります。詳しくは、お住まいの市区町村の窓口にご確認ください。

▼参考資料
・保険料の軽減について 東京都後期高齢者医療広域連合
http://www.tokyo-ikiiki.net/easynavi/fee/1000530.html

医療費・介護サービス費が高額になった場合の負担軽減制度

説明する女性

また、支払った医療費や介護サービス費が高額になった場合には、後期高齢者医療制度においても、国民健康保険や被用者保険とおなじく、下記の高額療養費制度高額医療・介護合算療養費制度を利用することができます。

<高額療養費>
1ヶ月(月の初めから終わりまで)に病院や調剤薬局の窓口で支払った金額が定められた上限額を超えた際に、超えた分の差額が支給される制度。上限額は年齢や所得によって異なるほか、70歳以上の人については2018年8月診療分から新たな上限額が適用されます。詳しくは下記のサイトからご確認ください。

・高額療養費制度を利用される皆さまへ(2017年8月から2018年7月診療分まで) 厚生労働省保険局
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000167493.pdf

・高額療養費制度を利用される皆さまへ(2018年8月診療分から) 厚生労働省保険局
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000161153.pdf

<高額医療・介護合算療養費(高額介護合算療養費)>
1年間(8月1日から翌年7月31日)に支払った医療保険と介護保険の自己負担分が上限額を超えた場合に、差額が支給される制度。こちらも年齢や所得によって上限額は異なり、70歳以上の人については、「現役並み」(年収370万円以上)の世帯のなかで年収の多い人について上限額が引き上げられるなど、2018年8月から制度の見直しがおこなわれます。上限額の詳細などについては下記をご参照ください。

・高額療養費制度の見直しについて(概要) 厚生労働省保険局
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000158082.pdf

なお後期高齢者が高額療養費や高額介護合算療養費の支給を受けるには、市区町村の窓口での申請が必要となります。そのため医療費や介護サービス費が多くかかった際には、市区町村の役所にある保険を扱う窓口に確認をおこなうのを忘れないようにしましょう。

医療費に不明な点がある場合には市区町村の窓口で確認を

公的な医療保険においては、高齢者の自己負担額が「70歳~74歳」(原則2割)→「75歳以上」(原則1割)と段階的に軽減されていくため、病院における治療や、調剤薬局で出されるお薬が同じだったとしても、実際に窓口で支払う金額はそれぞれの年齢で変化していくことになります(一定以上の所得がある人は軽減の適用外)。

また後期高齢者医療制度には、被保険者が亡くなり葬儀をおこなった際に、喪主に対して葬祭費を支給する制度も設けられています。葬祭費の支給を受けるには被保険者が居住していた市区町村の窓口での申請が必要となり、葬祭費の金額はそれぞれの地域の広域連合によって異なります(通常は2万円~5万円程度)。

後期高齢者医療制度は制度がスタートしてまだ日が浅いことから細部の変更がおこなわれることも多く、75歳以前に加入していた国民健康保険や被用者保険と異なる部分も多いため、医療費の支払いや制度について不明な点がある場合には、市区町村の高齢者福祉や保険を扱う窓口にすみやかに確認することも大切といえるでしょう。

▼参考資料
・高齢者の定義とは 65、70それとも75歳? 産経ニュース
https://www.sankei.com/premium/news/170129/prm1701290029-n1.html

・後期高齢者医療制度について 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/info02d-35.html

・後期高齢者医療制度のあらまし 概要版(平成30年4月版) 神奈川県後期高齢者医療広域連合
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/kouki/datafiles/shosasshi-h30.4.pdf

介護ぱど運営事務局